ありますや
□嵐の日
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今日は朝から嫌な天気。
私は、『ありますや』カウンターに座り、ボンヤリとココアを飲んで休憩を楽しんでいた。
小松さんも傍らでココアを飲みながら本をよんでいる。
外はいい感じに風が鳴っているというのに、『ありますや』は今日も静かだ。
「暇ねぇ。」
シッピーが退屈そうに耳の裏をかいた。
私がうなずきそうになったとき、やっと待望のお客様が来た。
カランカランカラン
外の風のせいでうるさく鳴る鐘を響かせて入ってきたお客様を見て、私は固まってしまった。
「いや〜参った、参った。」
赤い肌、金髪の髪、ちょと出てる角と牙、黒い雲を従えて、何やら袋を担いで入ってきたきたのは、小鬼だった。
「ほぉ、これは珍しいな。」
小松さんは、そう言ってマグカップを置くと、動けない私の代わりに小鬼を迎えた。
「あぁ、あんたが店主かい。」
小鬼は小松さんの腰辺りまでしか身長がない。
声がざらざらとしゃがれていた。
「そうだ。探し物は何だ?」
すると、小鬼は困ったように頭をかいた。
「いや、俺が探してほしいのは、ものじゃなくて、人なんだ………」
「ここは人探しもできるぞ。」
その言葉に、小鬼の顔がパッと輝いた。
小松さんと小鬼が商談をしている間に、こっそりシッピーに聞いてみた。
「ね、あれ、鬼だよね。」
「うん、どうみたって鬼でしょ。」
さっきからシッピーの毛が立っている。
「そこ!」
突然、小鬼に指を指されて、私達はビクッとした。
「聞こえてるんだからな!
俺は、小さくても雷神なんだぞ!」
「え、えぇっ!雷神!?」
「そうさ!これから、この町にでっかい雷をドーンと落としてやるからな!」
「じゃあ、さっさと行ったらどうなの?」
シッピーは雷神に冷たい。
もしかして、雷が苦手なのだろうか?
「それができなくて困ってるからここに来たんだろう!?」
「小松さん、雷神さんはどうしたんですか?」
これ以上シッピーと雷神を話させておくと、険悪になりそうなので、私は話題を変えた。