本3
□光と闇の恋物語
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翌日。
ティンは今までずっととどまっていた所にいた。
両手にはあのロケットを握りしめて。
足下で時々聞こえるバイクの爆音にびくつきながら待っていたら、例の悪魔がやってきた。
ティンと悪魔の視線がかち合った瞬間、悪魔はため息をついた。
「やっぱりお前が持ってたのか……」
探し物の術によってその黒い爪先に灯された赤い光が、まっすぐにティンの手を貫いていた。
「す、すいません。本当はそのままにしておけば良かったって気づいたの、天界に帰ってからだったんです。探してましたよね?」
「無論だ。」
悪魔はティンの手からそっとロケットを取った。
「あと、昨日はありがとうございました。無事に天使になることができました。
まだ仮ですけど……」
「仮天使なんてものがあるのか。」
「いえ。わたしが自力で地上に降りられないせいだけです。」
「……俺、余計なことしちまったか?」
ティンはびっくりした。
まさか、悪魔からそんな反省するような言葉が出てくるとは思わなかったのだ。
天使から見た一般的な悪魔のイメージは、
傲慢でずる賢く、他人のことは知らんぷりするような冷たいイキモノ
なのだが、ここ最近の目の前の悪魔と接していると、そのイメージが少し変わった気がした。
ティンは頭を振って否定した。
「そんなことありません。
あなたが手伝ってくれたおかげでわたしは一歩進めたんです。だから、余計なんかじゃ全然ありません!」
「そうか。」
悪魔はまた無表情に戻った。
「それじゃ、わたし、仕事があるので……」
「ああ。」
ティンは何度も頭を下げながらその場を後にした。