本3

□光と闇の恋物語
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ジャイティはいつものように自分の担当地域を見回っていた。

漆黒の翼を悠々と広げ、顔の両側だけ銀色に染めたやや長めの黒髪をなびかせながら、悪魔はある場所へ向かっていた。


(あぁ、やっぱりいた。)


紅い瞳が見つめる先には、同じように翼を持ったイキモノの姿。

しかし、相手は天使なので姿形はまるで違う。


真っ白い柔らかな羽を精一杯ばたつかせ、長い茶色の髪がボサボサになるのにも構わず、その天使の少女はなんとか下に降りようとしていた。


ここは今空中で、ちょうど東京タワーのてっぺんの高さぐらいに2人はいる。
下にはたくさんの車が飛び交っている。


そして、天使が必死に頑張っているのは、どうやら地上に降りようとしていること。

ただ、降りるだけで、髪を振り乱している。

半分くらいの高さまでは何度も行っているのだが、その後、どうしてだか急上昇してもとの位置に戻ってしまう。


ジャイティはこの天使の不可解な行動を30分ほど観察してからまた職務に戻るというのが、ここ1週間の習慣になってしまっていた。


そう、最初に見つけたのは1週間前。

たまたまこの方面に、地獄に逝く魂を狩ったと死神から連絡があったため来てみると、彼女がかくのごとく奮闘していたのだった。


最初見た時はなんか変なやつがいるなぁ、と素通りしたが、下で待っていた死神と会い、事情を聞いた。


「もう、5日前からあんななんですよ。」

「5日前?」

ジャイティは空を見上げた。

5日間もあんなことを繰り返しているのか……

「何故だ?」

思わず疑問を口にすると、死神は丁寧に答えた。

「まぁ、他の天使からの伝え聞きなんですけど、彼女はまだ天使の資格を持っていなくて、今度っていうか今、地上に降りて私たちから生き物の魂を受け取ることができたら合格らしいです。」

「降りれば良いじゃねぇか。」

ジャイティがあっさり言い切ると、死神は深いため息をついた。

「それができてればねぇ。私もあちこちで仕事できるんですけど。」

「貧乏くじ引いたってことか。」

「はい……。もう、いっそのことジャイティさんがなんとかしてくれませんか?」


その時は、天使に関わるのはごめんだと言って、魂を地獄へ堕としに帰ったが、翌日、ふっと気になって行ってみると天使はまだもがいていた。


それから1週間、ジャイティは30分をこの無為なことに費やすのが習慣となっていった。


しかし、今日のジャイティの心境はいつもより苛立っていた。
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