本2(満)
□心の宝石
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ナズナはいい加減疲れて噴水のへりに座った。
タンポポ姫のパーティーには貴族騎士階級として出席しなければならないことは分かっていたし、様々な付き合いがあることも承知していたが、まさかこれほど疲れるとは思ってもみなかった。
さらに、いつもは軍服なのに今日は正装をしているので、落ち着かない。
「はぁ。」
思わずため息をつくと、目の前に人きた。
「何をため息ついているのですか?ナズナ。」
「ひっ、姫!?」
タンポポ姫はニッコリ笑うと、同じように噴水に腰掛けた。
俺は慌ててひざまずいた。
「この度は、15歳の誕生日、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。さ、せっかくですから、隣に座ってくださいな。
貴方と私は幼なじみも同然なんですから。」
そう言って、タンポポ姫はふわりと笑った。
俺はちょっと離れて座った。
「久しぶりですね、こうやって話すのは。」
「ええ。俺も騎士学校に入ったり、忙しかったですから。」
「若干21歳で貴族騎士階級入り。すごいですね。」
そこで、言葉をきると、姫はじっとナズナを見つめた。
いつもより真剣な目に、どぎまぎする。
「ど、どうしたんですか?」
「……言いたいことがあります。
私、ずっと………」
「タンポポ!ここにいたのね!」
ラベンダー姫がタタタッと駆け寄ってきたため、話は中断された。
「タンポポのお父様がお呼びよ。これから舞踏会が始まるから、まずは私と踊ろうって。だいぶお酒が入っていらしてるみたい。」
「えー、お父様と?全く、私はもう15歳なのよ!?」
そう言いながら、笑って立ち上がると、ナズナの方を向いた。
「では、失礼いたします。
……続きは、必ず言いますからね。」
そして、ラベンダー姫の手をとると、一緒に城の中に戻っていった。
俺は奇妙な緊張感から解放されると、また社交場に戻った。
多少赤くなった顔は、アルコールのせいと言えば良い。