本3
□第六話
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「え……?それだけ?」
「おう。シンプルかつ、お前の安全も確保されたんだ、文句ないだろ。」
う〜ん、まあ、そうなんだけど、僕はもうちょっと、緊迫した駆け引きとか、囮とか、凄いものを想像していたので、拍子抜けしてしまった。
「僕、何か手伝うことない?」
「ないな。っていうか、陽明がいると逆に邪魔だ。」
グサッときた。
『邪魔』という言葉が頭の中でエコーしている。
一体、僕は何しに来たのだろう?
「さてと、明日出撃となれば、今日は休むっきゃないよな!早速ベッドを整え………」
「何を言っているのだ、まだまだ仕事が溜まっているだろう。」
「あんなもん、部下にまかしときゃ良いんだよ。」
「あれは最後に自分の指紋が必要だったはずだが?」
「………」
結局、再びシガルはラギーに引っ張られるようにして連れていかれてしまった。
「ま、陽明。自分は死なないんだから良いじゃねぇか。」
「うん………」
「大人しく朗報を待とうぜ。あ、それとも、また魔界をぶらつくか?」
「う〜ん、いいや。部屋で大人しくしてるよ。」
「……そうか。じゃ、部屋でトランプでも……」
「ううん、寝るよ。気、遣ってくれてありがと。」
「や、別に……」
ベルツの心配そうな顔を振り切って、僕はシガルの部屋に行った。
部屋に入ると、真っ先に布団にダイブした。
そして、ありったけの力を込めて枕を、ベッドを叩いた。
何度も何度も、自分の無力さに嫌気がさしながら。
「くそっ………」
僕はイライラしながら、叩き疲れて、仕方なく、眠りに引きずり込まれた……。
目を開けると、今度は真っ白な所にいた。
また、か。
僕は身構え、油断なく目をはしらせた。
「陽明、陽明……!」
バッと後ろを振り向くと、遠くに光輝がいた。
あれが、今回の罠か。
でも、もう騙されない。
「陽明!」
僕は光輝とは反対の方向に駆け出した。
「待って!陽明、そっちに行ってはダメ!」
「もう騙されるもんか!」
「陽明!」
僕は走り続けた。
早く、夢が覚めろと願いながら。
そして…………
不意に、何も見えなくなった。