剛×ジャン

□売女の憂鬱
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「おぉっとぉぉぉ!!!ジャッキー・ブライアント選手のサマーソルトキックが日守 剛選手にクリーンヒット
ォォォォ!!!これは立てるかぁっ!?」
第4回世界格闘トーナメント。大歓声の中で、10カウントを取られて剛は自分に課せられた任務を遂行する
ことなく、敗退した。
その様子をジャンはモニターを通じて見ていた。
「ヒノガミ・・・・」
思わず身を乗り出し、呟く。
ジャンには剛の今後がわかっていた。
始末される。
つまり、殺されるということを。
J6のお偉方も今の試合を見ていただろう、任務も果たせず、その上組織の顔に泥を塗った彼をどんな惨たら
しい殺し方をするのかもわからない。
そう思えば、いても経ってもいられなくなった。しかし、ただの一介の暗殺者の一人にすぎない自分にはど
うすることもできない現実も見えて落胆する。
それでも、ジャンは剛をどうしても救いたかった。
ジャンにとって、剛はこのJ6において、恋心を抱いている相手である。
拉致をされてまもなくジャンはその美しい容貌が災いしてか、J6のペドフィリアの性向を持つ幹部の性玩具
として扱われていた。そして、玩具としての興味を失われた頃に、今度は暗殺部隊の男たちの慰み者にと放
り出されてしまったのである。
その時に、ジャンを助けたのが剛であった。
まだ少年と表現するのが適切なほどの年齢の剛が、複数の大人の男たちを次々と倒し、ねじ伏せ、そして、
命を奪ってゆく。その姿は、恐ろしく、ジャンの目には地獄で罪人たちを裁く鬼たちの王のように映った。
返り血を浴びて、剛は表情の少ない目で笑った。ジャンは思わず微笑みかえしていたのかもしれない。
剛にしてみれば、日頃から強い反感を持っていた彼らを何かの理由をつけて殺したかっただけで、ジャンを
助けたいとは全く思ってなかったのだが・・・。それでも、ジャンはJ6に拉致されてから初めて他人に助け
られたことには間違いなかった。
多分、あの瞬間にジャンは剛に恋をした。
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