真珠の宝箱
□降り続く呼び名
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ずっと好きだった彼女を手に入れて数日。つい先日、初デートをした。
名前で呼んで良いか、と聞けば彼女は嬉しそうに笑っていた。それが堪らなく好きで、今日も学校で彼女に会えるかと思うと、逸る気持ちが抑え切れなくなりそうだ。
夏休みに入る少し前、教室の扉をガラっと開ければ、ウザったくも女共が群れてくる。
「日番谷くーん」
「あのねあのね」
彼女がしたら可愛い行為も、他の女なんかじゃ可愛いどころか、女なんかに見えやしない。
「終業式の日、皆で何処か行かないかって話してるんだけど」
意味もなくモジモジする女の群れを掻き分けて席に着く。それでも、女の群れは引かなく、キッと睨んでやれば「きゃー」と、世に聞く黄色い声というのが返ってきた。
クラスの男共の話によれば、俺が桃の事を名前で呼ぶようになってから、この集団は俺に取り入ろうとするらしい。悪いとも思わないが、世界中で俺が名前を呼びたいと思うのは桃だけだ。
桃の席を見れば、鞄はあるのに、本人の姿がなかった。この女の集団が来るようになってから数日、あまり桃と話せていない。