真珠の宝箱

□温もり
1ページ/2ページ

温もり



温かくてちょっと堅い腕。


これは誰の腕?


抱いてくれているのは分かるんだけど誰かは分からない。

私は紗久羅(さくら)と言う名前らしい。

凄く良い名だ、と誰かにほめられていた。

それはお母さんの声だと分かった。

私はちょっと居心地が悪く、泣いた。

「静かにしろよ、母さんは今寝てるから父さんと一緒に外に行こうな。」

そう言ってお父さんは私と一緒に外に出た。

外は眩しくて、暑くて…
帽子を被っていたけど日が高かったのを覚えてる………


数年後



「お父さん!!」
家に居るとお父さんが珍しく早く帰ってきた。

「紗久羅か…うおっ!!」
ドン!と私が抱きついてお父さんが変な声を出した。
「シロちゃんお帰り!!」
ドン!と更に後ろからお母さんも抱きつく。

「お前等…」
前と後ろに娘と妻。何がしたいのか分からない。

「紗久羅!!シロちゃんから離れて!」

お母さんが言った。

「お母さんこそ離れてよ〜」
私も言う。

「おい!俺の事は無視か?俺はお前等の玩具じゃねぇんだぞ。」
はぁ、と溜息を付きながらお父さんが言った。

「「分かってるよ!!大事なお父さん。」」

お母さんと私で言葉が重なる。

「はいはい。分かった分かった。」
そう言ってポンッと手を乗せてくれる。

私はこの時の手が好き。

私は呆れながらも優しいお父さんの目が好き。

ずっと…


「紗久羅、散歩にでも行くか?」

勿論桃も、とお父さんが言った。

「「うん!!」」
また重なる。


今日も日差しが高い。

あの時と同じ。


あの頃と違うのは

抱っこして貰ってじゃなくて手を繋いで散歩してるって事かな?





〜終わり〜
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ