リクエスト小噺

□蒼く優しく
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10年後の未来は、大変だった。
あのときバズーカに当たっていなければ、俺たちにあんな未来が待ち受けているなんて想像もできなかった。
だから俺たちは、未来を変えてきた。
それは、とてつもなく時間も体力も使う試練だったけれど、
それでも俺たちは、その未来を少しは受け入れられるものにできたと思う。
おかげで、帰還して日が変わっても心身ともにくたくただ。
それなのに、今に爆弾でも降ってきそうな気がする自分が、恐ろしい。
嵐の前の静けさに似ているというか。それくらい、この穏やかな時間が不思議だった。

「俺、今なら、おとなのツナの気持ちが分かるよ」
「山本?」
山本は、まだ匣を眺めながら言った。
「指輪を砕いたんだろ?争いの元にならないように」
確か、そうだった。10代目がボンゴレ・リングの存在を愁えていたことを、24の山本が教えてくれた。
「こんなハコだって、あるからケンカになるんだよ」
山本が、匣を握り締めた。
手の甲や肘に、未来でつくった生傷が見えた。
「山本…」
どう言葉をかけていいか迷ったのも、つかの間。
「獄寺。明日ヒマ?」
山本が、嬉しそうに聞いてきた。
「ヒマ…だけど」山本の本意は図りかねたけど
「じゃあ、つきあってよ」
山本はすぐに答えをくれた。
「これ、埋めにいこうぜ」
「埋める?」俺は、山本の手中を眺める。
「うん。今はいらないから」
山本がにっこり笑った。
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