リクエスト小噺

□ANSWER
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「おまえさあ、俺のこと好きなんだよな?」
「は?」獄寺が、呆気にとられた顔をして、すぐ「それって確認することかよ」と言った。
なんだよ、その言い方。「分かってたら確認しないよ」だから俺も、トゲのある言い方をしてしまう。分かっていたら、こんなこと聞かない。
「見て分かんねえ奴は、聞いても分かんねえよ」
だから獄寺も、いつもよりもっと酷い言葉を選ぶ。
「見たままを信じろっていうなら━━」俺が言葉を切ると、獄寺がこちらを見た。ガラスのような、透き通ったみどり色の瞳。「獄寺は、俺のことが好きじゃない」

獄寺の表情が、動かなくなる。
「俺のことよりも、ツナやハルや笹川のことを好きだ」
こんなこと言ったって、どうにもならないのに。
「俺とつきあっているけど、俺より好きな奴がいっぱいいる」
言いたくないことばかりが、唇を引き裂く。
獄寺の白い頬が、引きつっていく。
「つきあってるとか
「なんだよ、そこから確認しなきゃならないのか?」
獄寺の言葉にカッとなって、俺は遮った。
獄寺は黙ったけど、その顔は何か言いたげだった。
「つきあってないとは言わせないぜ。それだけの関係もあるだろ俺たち」
獄寺の頬は、ますます硬くなっていって。
「そんなこと簡単にできる奴じゃないだろおまえ」
俺は、その噤んだ唇を見据えていた。

分かっている。本当は、分かっているんだ。
獄寺が、俺との関係を認めていることも、俺を好きなことも。
言葉や態度に現せない性分だってことも、本当は俺が誰よりもいちばん分かっている。
でも、俺は聞きたかった。
そんな獄寺の言えない言葉を聞きたかった。
意地悪をしたいんじゃない。無理に言わせることだって本意じゃない。
だけど、俺は不安なんだ。
獄寺は、言葉を使わない、態度にも表さない、俺にだけ。
それが積み重なっていくと、
獄寺は、俺に気持ちを伝えないんじゃなくて、伝えることがないだけなんじゃないかって、不安になる。
俺が聞きたいって時くらいは、言ってほしいのに。

でも、その唇は開かれて。
「10代目は特別だ。比較対象がねえ」
獄寺は、淡々と言い放った。
「おまえの野球みたいなもんだ」

違うよ。
獄寺は、何も分かっちゃいない。
俺は野球だけど、
おまえはツナなんだ。
その違いが、獄寺はまるで分かっちゃいない。
たとえばいまツナが死んでしまったとして、代わりの人間が10代目になっても、きっともう獄寺はそいつには傅かない。つまり、おまえはやっぱりツナじゃなきゃダメなんだよ。
それが、悔しい。
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