リクエスト小噺

□ANSWER
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「なんかあったのか?」
帰り道、ようやくふたりになれた時(でもぜんぜん楽しくない)、獄寺が聞いてきた。
「自分の胸に聞いてみろよ」
そう言っても、獄寺は首を捻るだけだ。
その仕草さえも目障りで、俺は獄寺の先を歩いた。

みんなで遠くの海まで行って、楽しい思い出をつくるはずだったのに、
今日の楽しかったところなんて、なかなか思い出せない。
でも、分かったことはひとつある。

今日みんなで出かけたことで、俺は本当に分かってしまったんだ。
ツナと、笹川と、ハルと、俺。この4人で、獄寺の中で優先される順位は、1位はツナで、最下位は俺だってことに。

百歩譲って、ツナが1位なのは許そう。俺とつきあう前からだし。
でも、なんだか許せないのは、俺よりもあの女子ふたりが優先されることだ。
でっかい図体の男が華奢な女の子と張り合うなんて、みっともないかもしれないけど。
獄寺だって、あのふたりより俺に好かれているって分かっているんだから、ちょっとは優遇してもいいと思う。
でも獄寺の態度は、まったくそんな素振りを見せなくて。
あまつさえ、足場の悪いところで笹川に手を貸したり、ハルの肩で眠ったりする。
俺に顔を向けるときは、悪態をつくときだけ。
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