リクエスト小噺

□アメあと
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10代目の家にお邪魔していた、夏の夕方。
外が、いつもより暗かった。
「雨が降るのかなあ」
10代目が呟いた。
「早めに帰ります」
俺はそう笑って、10代目に背を向けた。

最近、雨になると山本を思い出す。
ボンゴレの守護者に選ばれてからだ。
あいつが“雨”の守護者になってしまったから、俺は雨になると山本を思い出さずにはいられない。
いつも同じ“晴”やめったに見られない“霧”なら、きっと思い出さなかったのに。
そう思って、また空を見上げた。
黒い雲が、俺の視界を覆った。





アメあと





ああ、これは本当にやばいかもしれない。
10代目の家に向かう時は、あんなにきれいな大空が広がっていたのに、
今は、どこかで雷鳴さえ聞こえる。

ベランダには、サンダルが置きっぱなしだ。
天気が良かったから鉢植えも置いてきた。
せっかく乾いた洗濯物なんかも、もういちど干すなんて面倒だ。
そう思って、走ったとき。
空に蛍光灯がついたような激しい光が見えたとともに、ドンという大きな音が聞こえた。
それを合図に、大きな雨粒が一気に落ちてきた。
「マジかよ」
そんな独りごとも、雷鳴に掻き消される。
俺は家に帰り着く前に、近くの公園に駆け込んだ。
たしか、小屋があった。木製で狭そうだけど、少しの間なら凌げそうだ。
これくらいの雨は、少しひどい夕立だ。すぐやんでしまうだろう。

人工的な武器を使った戦場より、自然災害の方が壮絶な結果を招くことがある。
そんな話を、小さいときに聞いたことがある。
劣勢を強いられているときも、その気候により優勢へと翻ることもあると。
それくらい、自然の力は敵にも味方にもなるということなのだろう。
その意味を、俺は再確認した気がした。
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