T

□profile
3ページ/5ページ

橋を渡ろうとした、そのとき。
「あ、山本。あれ沢田と獄寺じゃねぇ?」
誰かが、橋の向こう側を指した。
「……あ」
指された先には、ひとつのカサの下で歩く獄寺とツナ。
きっと、遠慮しきれなかったツナが、相合い傘ならって折れたんだろう。
ふたりとも、カサの縁に近い肩が濡れて。
それでも、そんなの気にしてないのか楽しそうに話し込んでいた。

今の俺も、獄寺から見ればあんな感じなのかな。
今の俺みたいに、心の狭いことを考えたりする?
そんなことを思ったら、
俺に気づかないでほしいとおもった。
獄寺に、そんなこと思わせたくない。
そう、思っているのに
ツナがこっちを向いて、
つられて、獄寺が。
そして、その顔がはっきり見えるくらい、俺たちは近づいていた。

獄寺が、ちょっと困ったような顔をする。
そんな顔、するなよ。
俺にまでうつっちまう。

「…獄寺。ごめん。今日、おまえんちに行く約束してたんだっけ」
俺の言葉に、獄寺が顔を上げる。
嘘だ。本当は、そんな約束していない。
していたら、俺はぜったい忘れない。
それなのに。
「…忘れやがって」
獄寺は、そう言うと。
「失礼します」ツナにカサを持たせて、
俺の服を引っ張った。
「…ごめん!ラーメンまた誘って!ツナもじゃあな!!」
俺は、みんなにそう言って、
獄寺と一緒に駆けた。
雨はまだ降っていて、体が少しずつ濡れていったけど。
気にならない。
獄寺が、俺を優先してくれたことが、すごく嬉しかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ