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□profile
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いつも一緒に帰るふたりの中には、その流れというか空気ができていて。
俺は、たまに馴染めなく思う時があった。
それはたぶん、
俺の心が狭いから。
それぐらい、俺は獄寺を好きになりすぎた。

なんだよ獄寺のやつ。
いつもいつも、ツナを優先して。
俺だってカサ持ってないし、獄寺こそタチの悪い夏風邪ひいたら困るのに。
そんなことを思ってしまう自分が、ちょっとキライ。

自分で自分にため息つきながら、職員室の掲示板を眺めていたら。
カサはもうないぞと先生に言われた。
ツイてないときって、本当にツイてないのかもしれない。
なんだか、腹も減ったし。
部室に何かないかな。
そう思っていると、野球部の奴らがぞろぞろやってきた。
カサを持っている奴もいれば、持っていない奴もいて。
突っ立った俺に気づくと、みんながラーメンでも食いに行こうぜって誘ってくれた。
うん行く行くなんて、俺は。
気色悪いとか言いながら、ふざけて相合い傘に入った。
外に出たら、カサを伝って雨粒が肩に落ちたけど、ぜんぜん気にならない。

これの相手が、獄寺だったら、このノリは成立しない。
まず獄寺は、肩が濡れるって怒るだろうし、
俺も、獄寺が濡れるとかわいそうだからカサを獄寺の頭の上に持っていく。たとえそれで、俺がもっと濡れても。
それぐらい、俺は獄寺を好きになりすぎた。

誰かを好きになりすぎるのは、つらい。
自分のありのままを好きになってほしいのに、
そのありのままが嫌われたら最後なので、見せることができない。
って、そんなことここで言ったら笑われそう。
獄寺の前でも、野球部の奴らにも使えない、このノリは、一体どこで誰が許してくれるんだろう。
そんなことを、ぼんやり思った。
こんなにいろんなことを考えてしまうのは、
雨とツイてないのと獄寺を好きなことが重なっているからかもしれない。
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