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□いくつになっても
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やがて面会時間は終わり、静かになった病室で、俺はベッドに寝転んだ。
ため息をついて目を閉じる。
思い浮かぶのは、獄寺の顔。

けっきょく来なかったな。
何か用事でもできたのかな。
そういえばツナが入院した時、獄寺のやつ慌てすぎて自分も事故に遭ってたっけ。
そう思い出して、俺はがばっと起き上がる。
まさかな…。
そう思うけど、もしかしたらなんて思って。
俺は首をぶんぶん横に振る。

電話してみようかな。
でも、催促してるみたいで図々しいかな。
だけど心配なんだ。
俺を大事にしてくれるおまえが、
俺が入院した日に、俺の誕生日に、
顔も見せてくれない理由を知りたいんだ。
会えないと、気持ちがうんと濃くなってしまう。

俺は公衆電話のある廊下に向かうべく、ベッドから降りた。
病室のドアを開ける時、そこではじめて
「…え?」
廊下側のドアノブにビニール袋が提げられていることに気づいた。
けっこう重いものが入った、丈夫そうな袋。
「なんだこれ」
同室のひとたちのものじゃないことを確かめてから、中を覗く。

まずハンガーが3本ほど飛び出ていて。
プラスチックの皿と箸とフォークとスプーン。
タオル。靴下。アイマスク。
小袋の菓子。
なぞなぞの本。
そんな、入院するに困らなさそうなものが詰まっていた。

獄寺だ。
獄寺の家に置いてきたコップを見つけて、俺は確信した。
中にはもうひとつ、紙袋が入っていて。
その中に、新品の黒いリストバンドが入っていた。

俺はいよいよ、居ても立ってもいられなくなって、
公衆電話まで廊下を駆けた。
すれ違う看護師に注意されたけど、構わなかった。

受話器をとり、ボタンを押す。
もう、ずっと前から覚えている番号。
その前からずっと、俺は獄寺が好きなんだ。
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