T

□いくつになっても
2ページ/6ページ



「山本」
次の日、学校を終えたらしいツナが小僧と一緒に見舞いに来てくれた。
「よおツナ。心配かけたなー」
「大丈夫?」
俺はベッドから立ち上がり、ツナに椅子を勧める。ちなみに小僧は、すでに俺の肩だ。
「大丈夫、大丈夫」
「あの、これ…こんな時になんだけど。誕生日とお見舞いを兼ねて」
「おっサンキュー」
ツナが差し出した紙袋の中から、野球帽が出てくる。
「さすがツナ」
包帯を巻いた自分の頭に被り、俺は笑ってみせる。
小僧もニッと笑う。
「頭のキズも隠れるな。ツナの超直感もやるじゃねーか」
「ちっちがうよ!たまたまだから!!不謹慎だぞリボーン!!」
ツナが必死に否定するからおかしくて、俺たちはまた笑った。

そう、俺はけっきょく病院に運ばれた。
といっても、俺自身は実はまったく覚えてない。
きのう階段から転落した俺に気づいてくれたのは、物音を不審に思った先生だった。
でもその時の俺は、意識を失っていて。
目が醒めた時は、病室で医者や家族に囲まれていた。
怪我は、頭を少し切ったくらい(後頭部のアレはやっぱり血だった!)。
頭なので大事をとって2日ほど入院しましょうと医者に言われた。
そんな程度だから、わりと元気なんだ。病人みたいに頭に包帯をぐるぐる巻かれているけど。

「これで頭が良くなればラッキーなんだけどなー」
帽子を脱ぎ、俺は包帯を摩る。
「ツナもコケてみろ」
「なっ」
小僧が容赦ない提案をするから、俺はまた笑った。
「うん、獄寺もそんなこと言いそうだよな」
「あ…獄寺くんは、後で行くって言ってたよ」
ツナが教えてくれる。
「後で?」
「うん…ふたりで話したいこともあるでしょ?」
「ツナ?」
ツナが優しく微笑む。
「俺もさ、獄寺くんとしか通じない話とか、山本としか分かり合えないことってあるんだ」
おおきな飴色の瞳が、俺を映す。
「そんな風に、山本と獄寺くんの間でしか成立しないってことがあるんだろうなぁって、最近のふたりを見ると思う」
おとぎ話のような穏やかな口調。でもその中に、力強い情を感じる。
「それって、やっぱりすごくいいことだと思うんだ」

吸い込まれそうな笑顔に、俺は何も言えなかった。
ツナは、もうそろそろ気づいているのかもしれない。
そして、こんな俺たちを受け入れる気構えもすでにできているように思えた。

その時。
「山本さーん!」
ハルがでかい声でやって来て、俺たちの話は中断された。
「じゃ、そろそろ帰るね」
ツナはまたふわりと笑って、小僧と一緒に病室を出ていった。

その後も、病室にはたくさんの見舞い客が現れた。
学校の先生に、野球部の連中に、クラスの女子。
でもその中に、いつだって獄寺はいなくて。
俺はみんなに愛想を振り撒きながらも、獄寺が来ない焦燥感を募らせていた。
獄寺。
いつ来るんだよ。
それともツナには適当にごまかしたのか?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ