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□はぐるま
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はぐるま









「さ、む、い!!」
俺は山本の部屋に入るなり炬燵に直行した。
「あっ。山本てめーなんでコタツの電源ついてねーんだ」
「だって獄寺、俺たち今まで外にいただろ」
「帰ったら温まってるような予約説定つきのコタツにしろ」
「無茶ゆーなよ…」
山本が肩を落として見せる。

3月を春だと決めた奴は誰だ。
まだまだ、暖房器具が必要なほど肌寒い。

「ごくでらぁ」
山本が、俺のすぐ隣にぎゅうぎゅうと座ってくる。
小さい四角形の炬燵だから、他の3辺に沿えばいいのに。
そう思いながらも、炬燵が温まるまではコイツからも暖をとろうと、俺は黙っておいた。
「なんだよ」
「コタツそろそろ片づけようと思うんだ」
「はぁ!?」
俺はぐるんと山本に向いた。
「なんでだよ!?」
「いや、もう3月だし…」
「暦じゃねぇ、体感温度で考えろ」
「俺そんなに寒くないもん」
「じゃあ近寄んな」
肩に載せられた頭を力いっぱい押し返してやった。
「部屋も狭くなる気がすんのな」
「どうせ寝るだけだろ」
「ひでぇ。ちゃんと筋トレとかしてるぜ俺」
山本が得意気に言うから「そのわりには、たるんでんじゃねえ?」「ぅあいてっ」山本の腹の肉を抓むと、山本が声を上げた。
「俺は肉布団つけてねーから寒いんだ」
俺は、山本から顔を背けて、炬燵布団を引き寄せた。山本は、罰が悪そうに俯いている。
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