リクエスト小噺

□チアノーゼ
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「武。すげーヨかった」
獄寺はそう言うと、ご褒美みたいなキスを俺の額に落とした。
そしてまだ絡みついていた俺の指を自身から優しく矧いだ。
広げた俺の掌に散る、獄寺の愛液。獄寺はそれを指にとり、自分の蕾に沿わせた。
「……! ご、く…」
俺の目の前で、獄寺が自らの指で蕾を拡げる。
抜き差しされる白い指に、俺は目眩を起こしそうだった。
どこまで俺を扇動する気なんだろう。14の獄寺は、こんなエロいことを自らしない。おとなになると、誰もがこうも淫らなことができるのだろうか。
初めて見せる“獄寺”の官能的な姿を、俺は食い入るように見つめた。痛いくらいに勃起した自分自身を、撫でながら。
そんな俺の手を、獄寺は咎めるように握った。そして一言「待たせたな」と告げると、俺にのしかかった。
「ごくでら……」
獄寺は、何もかも分かっているという風に頷くと、俺の自身に指を絡めた。先端を、指なんかとは比べものにならない熱が襲う。
「ふっ…」「あっ……いい…」喘いだのは、俺の方だった。
獄寺は、俺の自身のいちばん張ったところをゆっくり飲み込むと、その後はやたらとスムーズに腰を降ろした。
「はぁっ…ン……」
大きくついた獄寺の吐息が、“もうぜんぶ入った”と告げているように聞こえた。それが同時に、俺の理性を呼び覚ました。

獄寺の寝室で、獄寺じゃない男を抱いている、最低な俺。
あまりにも残酷な裏切り行為が、俺の良心を苛む。
獄寺の重みが、その事実をまざまざと伝えた。
それが衝撃的すぎて、俺は呼応できなかった。「動くぞ」と言って行動に移した獄寺に━━。

「ぁうっ」
「やまもと……」
獄寺が、俺のペニスを軸にして動く。俺は獄寺の股に手を置くしかできない。
その様を、もうひとりの俺が、部屋の隅でじっと見ている。そんな感覚に襲われた。
いや、もうひとりの俺じゃない。これは…俺の罪悪感が生んだ、14の獄寺━━。

「あっ……あっ…武……」
24の獄寺が、上下に腰を揺らす。
俺は気が狂いそうになって、それでも揺れる腰を止められなかった。
「武…目ェ閉じんな……オナニーじゃねぇんだから……」
露骨な言葉に、また俺の体が浅ましく疼く。
これがオナニーだったら、どんなにか良いだろう。この締めつける内壁が、俺の手だったら、きっとこんな気持ちにならなかった。
なのに俺の手は、獄寺の雄芯を刺激して、絶頂を待ち侘びている。

だって、こんなの抗えない。
目の前の獄寺は、俺本人よりも俺の体を熟知している。
どうすれば俺が理性を投げ出すのか分かって━━「ああ…っ、もっ……とぉ……ッ」こんな声を出すんだ━━。
その途端、俺の頭はブチ切れて。
ただ無心に、快楽を貪った。
14の獄寺のことは━━もう、どうでもよかった。
腰を突き動かし、獄寺を啼かせ。
獄寺のいちばんエロい瞬間を目に焼きつけた後、先の2度よりも遥かに濃い一撃を獄寺の中に叩きつけた。



目が覚めると、もう夜の10時を回っていて。
ひとりぼっちの寝室を出ると、本来の持ち主はやはり24の姿のままで居間で眠っていた。
テーブルの上に、コンビニの袋があった。中に、安っぽい弁当ふたつと、俺の財布が入っていた。
俺は獄寺に毛布をかけ、財布の上に鍵を載せて、その場を離れた。


獄寺と抱き合っている間は、あんなにいろんなことを考えていたのに。
家路についている今は、不思議なほど淡々とした気分だった。
数時間ほど前の出来事なのに、一瞬の夢だったようにも思える。

家に着くと、帰りが遅いと叱られた。今日やっと、よくある日常を目にした俺は、なんだかホッとした。
風呂に入る時、鎖骨の下に獄寺の印を見つけた。
静かな水面に小石を投げたように、俺の中で何かが揺さぶられた。
それを振り払いたくて、俺は頭からシャワーを被った。
シャワーの湯が少し塩のような味がしたけれど、気づかないふりをした。
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