リクエスト小噺

□チアノーゼ
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「気持ち良かったか?」
俺の欲を躊躇うことなく嚥下した獄寺が、呼吸の荒い俺に聞いてくる。
獄寺はその綺麗な顔で俺を覗き込んできたけど、俺は視線を合わせずに一度だけ頷いた。

「きれいにしてやる」
そう言って、獄寺は俺のペニスにまた舌を這わせた。俺の下半身にまとわりついた、飲みきれなかった精液を舐め取る。
「ん……ごくでら…」
そんなことされたら、また勃っちまう。そして、獄寺は絶対に分かっている。だって、きれいにするだけなら、そんな風に甘噛みする必要ないだろ?
「くっ……ンッ…」
俺は腰を振り、絶頂を求めた。頭の中のいちばん冷静なところでさえ、すごくバカなことを考えていた。

なあ、獄寺。
たとえば、たとえばの話。
誰もいない部屋に、弁当がふたつ置いてあるとする。ひとつは、好きなコがつくった、でも嫌いなものばかりが詰められた弁当。もうひとつは、プロの料理人がつくった、好きなものばかりが詰められた弁当。
すっげー腹が減っている時に“どっちも食べていいよ”と言われたら、その誰もいない部屋で、
おまえなら、どっちを先に食べる?
嫌いな弁当に手をつけられる? 迷わねえ?

「ッ…ふッ…ン」
二度めの精で、また獄寺の口腔を汚す。
白く濡れた獄寺の唇はとてつもなく淫靡で、俺は目を瞑った。そうでもしないと、また欲に襲われそうだった。

俺は、迷う。そのくせ、迷ったあげくに好きな弁当を食べる。
そんな奴だって、今日わかった。
獄寺がいるのに。
獄寺が好きなのに。
獄寺を抱いてるのに。
俺は今、獄寺じゃない男に心を奪われている。
これって、恋人がいる人間として、絶対にいけないことだと思う。

「武」
獄寺が、まだ呼吸の整わない俺の手をとった。
導かれた先は、獄寺の自身。俺に手を押しつけさせたまま、獄寺は下を脱いでいった。
姿を見せたペニスは、まだ少し柔らかかった。
俺が、目の前で2回もイッたのに。そんなつまらない悔しさが、俺の指を大胆に動かせる。
「う、あ…やまも…」
獄寺が膝立ちになり、見せつけるように腰を前後に振るった。
でかく、紅くなったそれが、いやらしい汁にまみれていく。
いつもよがる鈴口を少し広げると、おとなの獄寺も綺麗な顔を切なく歪めた。
「ごく…で……ら…」
「武…」
獄寺が、俺の耳許で妖しく囁く。
「出る……もっと………」
「もっと…?」
「もっと…擦って……」
俺は言われるがまま、無我夢中で獄寺を煽った。
「ン……ァ…武…」
ネチネチいう音、艶やかな喘ぎ声。どちらも俺を魅了したけど
「…ぅ、く……あぁ━━━ッ、ぅん…」
俺から視線を逸らさずに達した獄寺の貌が、いちばん堪らなかった。
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