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□なんてサイコー
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適当に後片づけをして、服を整える。
「続き、俺んちでするか?」
俺が誘うと
「…今日は、いい」
山本が、俺を見ないで答えた。
しかも、あろうことか
「もう…当分、しない」
山本が、初めて俺を拒んだ。

「俺が、忘れるまで?」
山本が、またカッと耳まで赤くする。
「おまえがアレに弱いとはなぁ」
「ちがうっ、あんな触り方…するからだろ」
「今度、じっくり可愛がってやるよ。時間のある時に」
「当分はしないって言ってるだろっ」
「へえ、それならそれでこっちも助かるぜ」
「ぐっ…」
山本の顔を、俺は無理やり覗き込んだ。

山本が、俺の弱点を攻める理由が、分かる気がした。
「かわいーなおまえ」
ふだん見せない表情を、見つけたい、見ていたい。
「好きだぜ山本」

「やめろよっここ学校だろっ」
必死な山本がおかしい。
「もう学校でもしないっ」
「場所の問題かよ」
つっこみながらも、山本に変な性癖がつかなくて、内心ほっとする。

なあ山本。
からかってるだけじゃないんだぜ。
俺は嬉しかったんだ。
おまえが、俺に感じたことが。
おまえの感じるところを、自分で見つけられたことが嬉しい。
おまえだって、今までそうじゃなかったのか?

昇降口に出ると、さっきの野球部の奴がまだ山本を捜していた。
だから山本は、俺に別れを告げて駆けていった。
その後ろ姿に小さく手を振って、俺は背を向けた。
外から見上げると、俺たちの教室が目に入った。
窓からは、やっぱりカーテンが見えて。
「…見えたといえば、見えただろうなあ」
俺は呟いて、煙草を取り出した。
山本には黙っておいてやろう。
そんなことを考えながら。
あの赤い顔をまた思い出して、頬を緩めた。





おわり。次のページはあとがき→
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