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□今年もよろしく
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「今日もよろしくなー獄寺くん」
「はい、これがお品書き」
親父と俺が、獄寺に竹寿司の前かけとお品書きを渡す。
「……おう」
獄寺が、複雑そうな表情でそれらを受けとった。

12月30日から1月3日の5日間。
獄寺は泊まり込みで竹寿司のアルバイトをしてくれている。

年末年始は、うちの店はとにかく忙しい。
だから終業式、俺は獄寺に一緒に店を手伝ってもらおうと頼んだ。
獄寺が厨房に入り慣れていないことは知っている。
でも、客の注文をとったり、食事を運ぶことはできるだろう。
親父は、そんな簡単な戦力でも(獄寺には言わなかったけど)欲しがっていた。
でも案の定、はじめ獄寺は断った。
どれだけ頼んでも承諾してくれなくて、
困った俺は、奥の手を出した。
━━じゃあツナに頼むしかないな。

「ほんと、ツナ様々だよなあ」
獄寺にとってはもちろん、俺にとっても。
10メートルほど先で注文をとっている獄寺には、俺の呟きは聞こえない。
それどころか。
「おい山本、てめえ休んでんじゃねえ!」
振り返りざまに声を上げる。
「おれ買い出し行くから。獄寺ひとりで大丈夫そうだな」
「たりめえだろ。さっさと行ってこい」
竹寿司の前かけ姿も板について、これじゃどっちが雇われてんのか分からねえ。
俺は苦笑して、店を出た。
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