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その日は、わりといつも通りな顔をしてやってきた。
仕事を終えて、家でのんびりして、京子に電話をして。
日が変わらないうちにそろそろ寝ようかなという時に、隼人が車で家に来た。

夜分遅くにすみませんと隼人はいつものように丁寧な言葉から始めた後、イタリアにいる9代目が病院に運ばれたことを告げた。
「どういうこと?」
俺は問いかけた。9代目は、高齢だったし通院もしていた。
鈍感な俺に、それでも隼人は明言を避けた。
「動いていないそうです」
「それって…」
「さっき山本から連絡があったんです。10代目にも連絡したそうですが、つながらなかったとのことで」
京子と電話をしていた俺に、隼人は尚も続ける。
「その後で連絡を受けた俺が直接こうして参りました」
いらっしゃってよかったと隼人が安堵のため息をついたのも束の間、隼人の胸ポケットで携帯電話が震えた。
「山本です」
俺にそう告げて電話に出た隼人の貌が、みるみるうちに紙のように白くなっていった。
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