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□treasure
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「じゃあね、ツナくん」
学校帰りの別れ道、笹川が10代目に手を振る。
「うんっ、また明日ねっ京子ちゃん!」
手を振り返す10代目のお顔が、蜂蜜をかけたホットケーキのように甘くなる。
小さくなっていく背中に、溜め息をつかれた10代目に。
山本が、何気なく聞いた。
「ツナって、笹川以外に好きになったヤツいる?」





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「俺は、4年生の時!」
10代目の向こうで嬉しそうな山本の声を、俺は歩きながらぼんやりと聞いていた。
「キャンプで同じ班になって一緒にカレー作ったりしたのなー」

10代目は、小学生の時には好きになった女はいなかったそうだ。
そこで話は終わるかと思ったのに、10代目が山本に初恋ネタをせがんだのだ。

「でも、嬉しいだけで告白とかそこまではなかったかな」
「そうなんだ」
「うん。なんか、好きな芸能人がすぐ近くにいるような感じ?」
「あっ、それ分かるかも」
「あっそうだよな、笹川ってそんな感じだもんな」
「ちょっ…山本!そんな、名前出さないでよー!」

盛り上がるふたりに、俺は入り込めなかった。
それどころか、ふたりの顔さえも見ることができなかった。

「え? ってことは、そのコ、並中なの?」
「えっ、あ…うん。そうだぜ」
山本が、一瞬だけ言葉に詰まって。
「最近は、ぜんぜん喋らなくなったけど」
急に、その女から一線引いたような態度を見せた。
俺はやっぱり、そんな山本の顔を見ていなくて。
山本の真意を知らんふりした。
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