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「ああ、雨だね」
放課後、昇降口でツナが声を上げた。
俺と獄寺は、空を見上げる。
「本当だ」
テストでせっかく早く帰れると思えば、ツイていない。
「10代目、カサお持ちですか?」
「ううん」ツナが小さく首を振る。「でも、走って帰ればいいし」
「これ、使ってください」
そう言って、獄寺が下駄箱から折り畳みのカサを差し出した。
「えっいいよそんな」ツナが首を横に振っているのに
「ダメです。夏風邪はタチが悪いですから」獄寺が食い下がる。
でもツナはなおも遠慮して
「それに、山本だってカサないでしょ」
やっと、ふたりが俺を見た。
「あー…うん、ない」
だって、天気予報は雨だなんて言わなかったし。
「職員室でカサ借りてくる。先に行ってろよ」
俺は、そう言ってまた校舎に向かった。
でも、職員室には行かない。
後は、ふたりが帰るのを待つだけ。




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