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□いくつになっても
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明日は俺の誕生日だ。
だから俺は、うきうきしていた。
おかげで、ちょっとキツい部活が終わった後も、なんだか元気なくらい。
だって、疲れることや嫌なことが終わるぶん、明日に近づくだろ?
だから俺は、うきうきしていた。
スキップどころか、ツーステップだって踏んじゃうぜ。

そんな風に浮かれていたから、野球の神様も呆れたのかもしれない。
部活を終えて昇降口につながる下り階段で、俺は思いきり踏み外した。
目の前の景色が、ガラス張りのエレベーターで移動するみたいに著しく変わって。
俺は踊り場に叩きつけられて、いちばん下の階段で頭を打った。





いくつになっても






痛い、と思うのに、
声が出ない。体も動かない。
後頭部が、じわりと濡れた感覚がする。
汗かな。血かもしれない。
確かめたい。そう思うのに、やっぱり体は動かなくて。
部室にまだ誰か残ってたっけ。俺はいつ起き上がれるかな。
そんなことを思いながら、俺は目を閉じた。
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