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□スイート☆ボム
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スイート☆ボム










コンビニの駄菓子コーナーで、懐かしいものを見つけた。
綿菓子が入ってるくせに、圧縮されたパッケージ。
「なんだそれ?」
俺が手にした鮮やかな紫色のパッケージを、獄寺が興味深そうに覗き込んでくる。
「獄寺食べたことない? これ、パチパチする綿アメなんだぜ」
「は?」
俺の答えに、獄寺の眉間が寄せられる。俺の質問をスルーしてることに気づいてないみたいだけど、その表情が答えだ。

「ん、はい」
レジで支払いを済ませた後、さっそく道ばたで件のパッケージを開け、中身をひとつまみ、獄寺に差し出す。
獄寺は素直に掌を広げたが、載せられたそれを見る目は訝しげだ。
「綿アメって、こんなんだったか?」
「ん?」
「紫だし、ぺちゃんこだし」
夏祭りで見たのは…と標的58を思い出してる獄寺。まー確かに、あれでは売られてないよな。売っても儲かりそうだけど。
「いいから食べてみろよ」
「おまえは食わねーのか?」
やっぱり不安そうに、食べるのを躊躇ってる獄寺。
「なんだよ、まずくないって。じゃあ一緒に食う?」
「べっ、べつにそういうわけじゃ」
「はい、せーのっ」
そうけしかけておいて、俺は獄寺が食べるのを確認してからそれを口に放り込んだ。

「あっ、てめ
パチッ
獄寺が口を開いた途端、その奥から乾いた音がした。
「!?」
獄寺が掌で口を覆う。
俺は逆に、大きく開けた口を獄寺に近づけた。
パチパチパチ

「なんだコレ…口ん中で、なんか飛んでる」
「コレだよ」
俺が紫色の飴を見せると、「もー1回!」と獄寺が、今度は飴がたくさん入っているところを探して綿菓子をちぎった。

「〜〜〜っ」
パチパチ。もう慣れた獄寺は、口を少し開けてその音を楽しんでいた。
せっかくだし、獄寺が楽しそうだし。今日は俺はなるべく飴は食べないよ。獄寺にやる。
「どう、獄寺。うまい?」
俺が話しかけるけど、獄寺は聞いてない。
「あ━━━━━」
口を開けると大きく聞こえるその音を楽しみながら、扇風機の前にいるみたいな声を上げている。
「飴に圧縮ガス入れてるんだって。へえ、知らなかった」
パチパチパチパチ
「綿んとこは、けっこうブドウの味が濃いな」
パチパチパチパチ
「聞いてねーのな」
ちょっと仕返し。
「獄寺、最後やるよ」
いつの間にか綿菓子がなくなり、小さな飴の破片だけが残されたパッケージ。それを逆さまにして、獄寺の口に流し込んだ。
嬉しそうに口を開けてるけど、この量は意外にキツいぜ?
「━━っ!」
口を閉じていても聞こえる、飴の弾ける音。
そこで、ふと思いついたことを口にする。
「獄寺の花火も、口ん中で火ぃつけたらこんなんなんかな」
「だか
パチ
「あれは花
パチパチ
「じゃねぇっていつも
パチパチパチ
「ってんだろーら!!
パチパチパチパチ
「ははは何いってんだよ獄寺。聞こえねー」「てっめ
パチパチ
うまく喋れない獄寺に、俺はにっこり笑う。
「また買いに行かね?」
「行く」
獄寺も合意したので、俺たちは、また逆戻り。
「もう口にないのに、まだ喉でパチパチいうぜ」
獄寺の顔も元に戻る。

「次に屋台出すなら、これ儲かりそうだな」
獄寺の何気ない一言に、俺の表情が緩んだ。










おわり。
お読みくださり、ありがとうございました。

昔なつかしのお菓子“わた○チ”ネタです。
先日、コンビニで見かけて、懐かしさに購入。
痛いくらいにパチパチしてました(笑)。

これを読んで、わた○チ買いにいった方が
いらっしゃると…おもしろいなぁ。

つか、このセンスのないタイトル…!(死)

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