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□俺があいつで、あいつが俺で
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10代目と山本と約束をしていた日曜日の朝。
「おはようございます、10代目ッ」
10代目のお部屋にお邪魔すると、すでに山本が来ていた。

10代目と山本が、俺の顔を見て、なんとも渋い表情をする。その横で、いつものポーカー・フェイスよりは少し笑みを含ませたリボーンさん。
見ると、投げ出している山本の足には包帯が巻かれている。
「なんだ、てめぇ。何やってんだ」
「あ、捻挫…」バツの悪そうな山本の顔。
「ダッセー」俺はハンッと鼻で笑うと「ねぇ」と10代目に向き直った。
「まーまー」
10代目は困ったように笑うと、続けた。
「あの、さ…」
「はい」
「えっと…」
なぜか言いよどむ10代目。困っているらしく、頬を掻く、この仕草…。
「どーしたんスか10代目!ハッキリ仰ってください。そんな、ほっぺたを掻くなんて、なんか山本のアホみたいっスよ!!」
「えっ!!?」俺の言葉に、10代目と山本が大きな声を上げて俺に注目した。え、そんなに驚くことかよ?俺の方がびっくりしてしまう。
10代目がゆっくり話しだす。
「昨日、学校でコケて…」
「ええっ!!大丈夫でしたか!?」
俺は知らない、となると、それは昨日の補習授業の前後に起きたのだろう。補習だけだから着いてこなくていいよと言われたけど、やっぱりお供していればよかった。
「お傍についていなくてすみません10代目」
「い、いや…」
10代目が、お顔の前で手を振った。
「ツナの体は無事だぞ。山本は下敷きになってネンザだ」
リボーンさんに言われて、俺は山本を見やる。10代目を庇ったところは誉めてやりたいが、ふたりっきりじゃないと……「ま、少しは落ち着いていいんじゃねーの」どうしても憎まれ口が先に出る。
その発言に、山本が声を上げた。
「そんなっ、獄寺くんっ」
「え?」
「……あ」山本が“しまった”というように口を塞いだ。
獄寺くんっ!?俺の体じゅうに、ぞわっとしたものと、ほわっとしたものが駆け巡った。
そのせいで、反応が少し遅れた。
「て…てめー!そんな呼び方すんな!気色わりぃ!!」
「ひぃっ!」山本が怯えた表情を見せる。
「なにビビッてんだ。バーカ!」
なんだか調子が狂う。
「てめー、そん時に頭でも打ったんじゃねーのか」
俺が言うと、今まで黙っていた10代目が答えた。
「おー、さすが獄寺、話が早い。実はそうなのなー」
ハハハと笑う10代目を、俺は凝視した。

なんだこの雰囲気…山本も、10代目も、何かが違う。
リボーンさんが告げた。
「どうやら、ふたりで頭を打った時に、体が入れ替わっちまったみてーなんだ」
「はぁ!?」
俺の絶叫が、沢田家に谺した。










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