くら蔵

□雲雀様の誕生日
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【5/2】


5/2の金曜日に一緒に帰る為に応接室を覗いた俺は唖然となった。

な…ナンデスカ?

黒い学ランを纏う(多分)少年が、変わるがわる立ち代わり、入れ替わり雲雀さん
の机にモノを置いていく。
本人は見回り中なのか不在ではあるが、深く頭を下げ、律儀に挨拶をしてから出
入りをしている姿は…ちょっと怖い。

副委員長の草壁さんに促され、室内に足を踏み入れたら更に凄い現状が飛び込ん
で来た。

机にも、床に置かれたダンボールにも…上納………プレゼントが山積みだった。

「……く、草壁さん。…風紀委員ってこんなにいましたっけ…?」
いや、解ってる。
解っています。
あんなにファンシーな包みは、流石に合わない事ぐらい。

心情を察してくれたのか、ちょっと困った顔になり、苦笑いをしながら教えてく
れる。
「……あれは、女生徒からのもあります。絡まれているのを委員長に助けられた
とか…色々ありまして…お礼でしょうか。」
「……はぁ…。」

聞いて無い。
聞いて無いよ!女の子達!!

普段は怖いとか言って、側に寄る女の子は居ないのに…いや、まぁ、確かに綺麗
な顔してるし…他校生とかにも結構告白されてるのだって知ってる。

…………男女問わず。


男は問答無用で殴るらしいけど。

他校生の分にしても…多いから、並盛中の女子の分も入っているに違いない。


思わず自分の鞄を引き寄せてしまった。


「……結構…高価そうな包み紙もありますね?」

大人びた彼には似合うけれど、とても同年代の子供の買えるブランドではない紙
袋や包み紙が見えている。

「……委員長は…大人の方にも人気がありますから……。」

あぁ、やっぱりそうなんだ。
そうだよね。
絡まれて助けられたなんて、中、高生だけじゃないもの…。

余計に鞄をたぐり寄せてしまう。

「綱吉?」
音もなく入室してきた雲雀さんの声にビクリと肩を跳ねる。
け…はい消さないで下さいよ。
「あの、お疲れ様です。」
「うん。待たせたみたいだね。」
大量のプレゼントを見ても動じないところを見ると…きっと慣れているに違いな
い。
「じゃあ、帰ろうか?」
鞄も持たずに、入ってきた時と同じ格好で俺の手を取った。
「じゃあ、後宜しくね。草壁。」
「え…え…あ…っ」

早い歩調に小走りになりながらついていけば、ヘルメットを渡される。
雲雀さんはヘルメットもせずに乗るのだが、俺には絶対着用させる。
「あの…良いんですか?」
「君を家まで送るのに何の支障はないけと?」
不思議そうな顔をして雲雀さんは首をかしげた。
こういう仕種は、本当に可愛いと思う。
「そうじゃなくて、あのプレゼントは……。」
まさか、自分のっていうのが無いのかな…。
「あぁ、あれなら草壁達が実家に運んでおくよ。」
確かに、あの量をバイクで持って帰るのは一苦労…っていうか無理だろうけれど
、ちょっぴりだけ胸が【ツクン】って痛んだ。
理由なんて、解んない。ただ、自分のもそうなるのかな?って思ったら痛くなった


「あ、そうだ綱吉。」
手が目の前に広げてだされた。
「っ…!雲雀さんの誕生日は5日じゃないですかっ」
慌てた俺は、思ってもみない言葉が口から飛び出た。


ば…馬鹿だ俺。
当日は雲雀さんに会えない可能性あるから持ってきたんじゃないか…。
前もって約束だってして無かったし、雲雀さんにだって色々予定があるのに…。
「ふーん。」

あ、怒らせたかも…。

「綱吉は5日に僕に渡したいんだ。」
「ふぇ?」

気のせいか、声が…凄く嬉しそうに聞こえる。

「ふふふっ」
「雲雀さん?」
笑ってるよ。あの雲雀さんが…。まさか、骸が憑依したんじゃ無いよな?

ぎゅう。って音が丁度いい位の力で雲雀さんが抱き締めてくれた。
「嬉しい………。」

「迷惑…じゃないんですか?」
ダラリとぶら下がる手には力なんて入らない。
「何で?」
「何でって…」
あんなに沢山の人に慕われてる人が俺なんかに祝われて嬉しい筈がないから。

「親にだって祝われても嬉しくなんて無かったよ。ただ歳数えだとしか認識して
なかったのに………綱吉に祝われるってだけで…凄い嬉しい。」


ギュウギュウと抱きしめられているのに、余り苦しさを感じない。
雲雀さんはまだ、楽しそうに笑っていた。
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