シリーズ物語

□ようこそ!ボンゴレへ!!5
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「なぁ、今日ボンゴレくんだろ?又セット壊され無いと良いんだけど。」
重いため息混じりに発せられた言葉に、綱吉は心ですいません。すいません。と謝る。
骸や雲雀は気に入らないと、直させるし、キレた獄寺もよくセットを壊してくれるのだ。
「まぁ、出たら視聴率取れるし…局的には良いんだけどよ〜。俺の彼女がサイン欲しがって大変なんだよなぁ。怖くてお願いなんて出来るかよ。」
(確かに、山本以外には頼みズライよね…。)
トホホと、自販機の側面に手を着いてしまう。
「キッツイなぁ〜。あ、そういや今日一緒に入るホワイト何とかってユニットの一人が、ボンゴレのメンバーと付き合ってるんだろ?」

(!?)

全く持って初耳な事に、綱吉はガバリと顔を上げる。
メンバーのプライベートには余り立入ってはイケナイと思い、そんな話はしないでいたのだが。
(何だ…皆普通じゃん…。)
獄寺の崇拝に近い感情や、骸のストーカー紛いの表現を知っているだけにホッとした。
(あ…でも、普通に女の子と付き合うって事なら山本かな?)
ドキドキと、耳を傾けている綱吉は分かったらからかってやろう。と、口が歪んでいた。

「え!マジで?誰誰?」
「名前しんねーんだよ。…スンゲー顔が整ってて…」
「リーダー以外整ってんじゃん。」
(そのとうりです…。)
「黒髪で…」
(獄寺君じゃないのか…。)
残念そうに、自販機の側面を指でなぞる。
「もう、一人のと仲悪くてこの間もセット壊してくれたんだよな〜。あ、今度ドラマ出るって聞いた。その子と…」
(えぇっ骸ぉ!?)
一見、愛想良く微笑んでいるが、その実意外な程に根性がひね曲がっているのをよく知る綱吉には驚きだ。
(あの骸と付き合っていける女の子なんて稀だよ!きっといい子なんだろうなっ)
両手を組ぱぁあ〜と、明るい顔になった綱吉に気が付かずに、スタッフの会話は続いていた。
「あ…ミラクルな髪型してる方か?」
「違う、違う。無表情の方だって。」

「………えっ………。」

綱吉の動きが止まる。

(……ひ、雲雀さん…?)
「ドラマ出なかったのになぁ〜。マジでかー!?アレだけ顔が良ければ選り取りみどりだよな〜。無愛想でも、顔が良ければ良いんだもんな〜。」
「それいったら、あのメンバーはリーダー以外選り取りみどりだろ〜。」
(…雲雀さんが…別の…女の…人と…。)
ガクガクと、震える指が自販機の側面を滑る。
「っていうか、アレでリーダーに成れるなら俺超アイドルだよなぁ〜。アイツなんて、ドラマにも出てないしなぁ〜。」
「所詮、メンバーのストッパーみたいなもんだろ。雑誌だって単品じゃ無理だろうしなぁ〜」
ガクガクと、震えた身体は力が抜けたように冷たい床に落ちて行く。
「いやいや、俺じゃアソコのリーダーさえ無理ーっ!」
二人の会話は綱吉の耳に入らない。

カツン。
硬質な音が廊下に響き、ざわついていた音が一切無くなる。
「……ねぇ、随分楽しそうな話をしてるね…君達。」

涼しげな声が二人の会話を途切れさせた。
自販機の正面に着いた手はピキピキとプラスチック性の商品窓にヒビを入れていた。
「「っわ…。」」
噂をしていた当人が現れて、年若いスタッフはビクリと肩を跳ねた。
「何の話…?」
側面にいる綱吉を見せないように立つ雲雀は動かないにも関わらず、殺すとばかりに睨みつけた。
すいませんでした!と、慌てて去る声が遠く聞こえる。
綱吉は震える手を口許に持ってきた。
「……大丈夫?綱吉。」
グイっと、強引に抱き上げて楽屋までの道を無言で歩いた。

ゆらゆらと動く視界には自分の手だけが映っている。
確かに、雲雀の体温も感じでいるのに全身が凍りついたようになっていた。


「赤ん坊!今日の仕事キャンセルだよっ!」
バタリと、音が大きく響いた部屋に物凄い勢いで入ってきた雲雀を一瞥したリボーンだったが、腕の中で震える綱吉を見て立ち上がった。
「あー?何言ってやがる………?どうした…。」
怪訝な顔で応えたが、雲雀腕の中に居る少年を見た途端に顔色が変わり、大股で近づいた。
額に触れた指は、綱吉の体温を感じなかった。
「さっき、局のスタッフが好き勝手な事を言ってたよ。」
苛々とした口調も綱吉には届いていなかった。
「綱吉の事…何も解らない…理解も出来ない草食動物の癖に…」
おそらく、こんな状態の綱吉が腕にいなければ、今すぐに飛び出して先程のスタッフをボコボコにしていただろうと、リボーンは深いため息を吐いた。
「……少し、落ち着け。」
時計を見れば後、二時間もしない内にメンバーが揃う。
それまでに、ここから引き揚げてメンバーには仕事をキャンセルした旨を伝えるか、しなければならない。
こんな状態の綱吉を見せたなら、「………局ごと破壊しかねねぇな〜。」
本来なら、仕事をキャンセルするなどあり得ない事なのだが、綱吉が絡むと見境がないアイツラを考えればやむを得ない。
「…おい、綱吉。大丈夫か…?今日無理か?キャンセルするか?」
ペチペチと、頬を軽く鳴らしてリボーンは綱吉の顔を覗き込む。
その顔色は、青いを通り越し白くなりつつあった。
「……え…あ…リボーン?」
やっと合った焦点にリボーンは再度問いかける。
「オメーがそんな状態じゃ、仕事に支障を来す…今日の歌特番辞めるか?」
「…あ…。」
「ちょっと、赤ん坊!?」

「……駄目。やる。」
震えながら綱吉はリボーンに向く。
「…お仕事キャンセルしたら…駄目。…新しいメンバーが入る前にそんな事したら、大変だもの…。」
明日の一面はキレイに飾られる事は間違いない。
だが、それは不名誉な事であったらいけない。
「……綱吉無理しなくても…。」
「黙れよ、雲雀。…ツナやるからにはきちんとヤレよ。具合わりぃのを1ミリだってだすんじゃねーぞ。」
止めようとする雲雀を制してリボーンは、釘を刺すように綱吉に言う。
「お前が動揺みせたら、又色々言われるぞ。」
「……うん。分かってる。」

ふぅと、息を吐きリボーンは雲雀に黒い上着を渡すと扉に向かう。
「アイツラが来るまでの2時間で、ソイツ何とかしろ!飼い主。」
(先にツナが入ってるって聞いてるから、そんなに時間無いけどな…。)
おそらくは、超特急で仕事を済まそうとしているメンバーを思いながら、パタリと閉めた扉に背を預ける。
一度目を閉じてから、息を深く吐き出して上を見たリボーンは、先程綱吉が買いに行ったと思われる自販機に向かった。
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