気まぐれプリンセス

□P.S.
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*第二十二幕

「護衛?」


ポカポカ晴れた空は絶好の洗濯日和。
中庭には洗濯物を干していた泡、小さな羽を羽ばたかせた鴉天狗と三羽の子供達がいた。


「そうです。未知なる敵勢力が奴良組に侵入しておるのですから泡様にも護衛をつけねばなりませぬ」

「大丈夫よ。(なるべく)屋敷から出ないようにするから」

「そうはいきませんぞ!そう言っていつもいつも屋敷から逃げ出されているのはどこのどなた様ですか!」

「逃げ出してるんじゃなくてただの散歩よ」


ニコニコと笑いながら鴉天狗のお説教をのらりくらり躱していくのはさすがと言うべきか。


「とにかく!護衛はワシの息子達が交代で付きますよろしいですな」


昔から彼の過保護な性格は変わらない。
有無を言わさぬ勢いで強く言う鴉天狗に泡は苦笑を零した。


「では泡様。私、とさか丸、ささ美の順番で控えますので」


表情の変化が乏しい黒羽丸にしては珍しく、どこか機嫌良さげに申し出る。
「兄貴ー、顔緩んでるぞォ」「デレデレだ」と弟妹が後ろから囁く声が聞こえるが、今の彼の耳には全く届いていない。
敵勢力が攻めてきてからというもの、情報収集に見回りと町中を飛び回っているのだ。
一つ屋根の下に居ても彼女と会う事はここ数日皆無に等しい。
それが例え護衛という立場でも想い人の傍にいれる事に黒羽丸は喜びを隠し切れないでいた、が─。


「いいのよ。三人共ここ最近忙しくて録に休んでないじゃない」


ピシリと目に見えるように固まる。
そんな黒羽丸の様子に気付かないのは泡と鴉天狗の一人と一羽だけ。


「アナタ達は組にとって必要不可欠な存在よ。私の事はいいからリクオの力になってあげて。それに、もし倒れたりしたらと思うと心配で仕方ないもの」

「「姫様…」」


自分達の体の心配を一番にしてくれる泡にとさか丸とささ美の二人は心打たれ、感動に浸る。
その横では悲しいやら嬉しいやら複雑な表情を浮かべる長男がいた。


「しかし、それでは泡様が…」

「大丈夫よ、黒羽丸。私には昔から頼もしい護衛がいるから」

「「「え?」」」

「そうよね、─カラス」


三羽鴉の疑問の声はそのままに、ふわりと柔らかな笑みが向けられた先には彼らの小さな父親の姿。
オイオイ…またかよ…、と次男と長女がげんなりしているのにも気付かぬまま目の前の現状は展開していく。


「頼りにしてるわ」

「──ッ!泡様ァァァ!!!!」


感動の余り、滝のような涙を流しながら鴉天狗は泡に抱き着く。
それをニコニコと笑顔で受け止める泡。
バキッと錫杖が折れた音などすっかり二人の世界に入ってしまった彼女らには聞こえず、『また始まったよ』と呆れる弟妹と怒りに震える兄がそこにいた。


これが僕らの日常行事
(仲が良いのはいい事だが…)
(兄貴の前では止めてほしいよな…)
((ハァー……))





end

四国編突入直後。
でも結局カラスは護衛そっちのけで総大将探ししてました、と。(←笑
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