気まぐれプリンセス

□一緒
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今日の夕餉は何にしようかしら?
挽き肉が安いからハンバーグ?
貰った野菜があるから回鍋肉?
お味噌汁はお豆腐ともやし?


んー、と頬に手を当てて考える今夜の献立。
二人ずつ交代制の買物係は今日は泡の番であり、もう一人の雪女は学校のためスーパーで落ち合うようになっている。


なら、リクオもきっといるから少し多めに買っても大丈夫ね。


大所帯の奴良組の食材を女二人で運ぶのは大変なことで、毎回重い思いをして帰ってくるのだ。
いつもなら首無が付いてきてくれるのだが、生憎今日は総大将である父に呼ばれ不在。
雪女が一緒の時はリクオも付いてきてくれるので荷物の心配はしなくていいようだ、と胸を撫で下ろした。
その時─


「お姉さーん。一人ィ?」

「うわッ、すっげえ美人!これからどこ行くのォ?」

「暇なら俺達とイイトコ行かない?」


行く手を阻むように泡の目の前には、チャラついた今時の若者と呼ぶに相応しい三人組。


「私の事でしょうか?」

「そうそう。俺ら今から遊びに行くんだけど、お姉さんもどう?」

「つーかお姉さんって言うよりお姫様?ホント美人だねェ」


ニヤニヤと厭らしく笑う男らに泡は呆気にとられ「はぁ…」と間の抜けた返事をした。
それを特に気にするでもなく、彼らは更に泡に迫ろうとする。


「お姫様ー、王子様が迎えに来ましたよォってか?」

「お城から抜け出してきたんですかー?俺らが遊んでやるって」

「マジでイイトコ連れてってやるからさ、お姫様」


ガハハと汚らしく笑う三人に泡はクスクスと小さく笑った。


「お、何?ウケた?」

「笑った顔も可愛いねー」

「早く行こうぜェ」


気を良くしたのか詰め寄ろうとする男らに泡は口を開く。


「ご存知ありませんか?」

「あ?」


金の目を細め、形の良い唇に薄い笑みを浮かべる様は─何とも妖艶。


「どんなに おてんばでも
 どんなに 我が儘でも
 どんなに 泣き虫でも
 どんなに ─自由奔放でも
  お姫様には必ず
    護ってくれる騎士がいるのよ」


バサッと羽音が聞こえ、漆黒に赤みがかった"彼"の羽が舞う。
間に降り立った黒は背を銀色に向け、護るように敵を見据えた。


「泡様、お怪我は?」

「大丈夫よ」

「貴様ら覚悟は出来ているのだろうな」


シャンと錫杖を鳴らし、瑠璃色の目がギロリと相手を睨みつける。
その威圧に「ひっ…!」と情けない声を出し、身震いした三人は逃げるようにその場を去って行った。


「ありがとう、黒羽丸。助かったわ」

「泡様、お買物に行かれるのでしたら私に言ってください。お一人では危険です。先程のような輩に連れ去られでもしたら…」


長い説教が始まる前に、黒羽丸の唇に人差し指を当てがい言葉を遮る。


「ごめんなさい。次は黒羽丸に付いてきてもらうようにするから」


今回は見逃して?
ニッコリと綺麗な笑みを向けられては、顔に熱が集まり、ウッ…!と言葉に詰まる。
結局は勝てないのだ、この姫には。


「今回だけですよ」

「ありがとう」


溜息と共にそう言えば、嬉しそうに笑う。


「黒羽丸もいることだし明日の分の買物も出来そうね。特別に一つだけ好きなもの選んでいいわよ」

「姫様…もう子供ではないのですから…」


相変わらずの子供扱いにがっかり肩を落とすも、根っからのお姉ちゃんな彼女は誰にでもそうなのだ。
だがやはりそこは想い人。
心にダメージはある。


「じゃ、行きましょうか」


クイッと空いている左手を小さな右手にひかれる。
控え目に握られた手から伝わる温もりに顔が一瞬で赤に染まった。


「雪女とリクオが待ってるわ」

「はい」


柔らかい笑顔につられて頬を緩め、繋がれた小さな手をギュッと握り返す。
ちらりと見えた横顔が仄かに朱く色づいていたのは気のせいではないだろう。



銀雲姫と鴉の騎士の恋事情
(王子様?そんなのいらないわ)
(お姫様の隣は漆黒の彼のものだから)





end

この後、三人にアイスを買ってあげるお姉ちゃんξδuδξ笑


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