気まぐれプリンセス

□星
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星が降りそうな夜。
それはきっと今日みたいな空の事をいうのであろう。


「(もう、少し…)」


奴良家の敷地で最も空に近い屋根の上。
そこで思いっきり背伸びをして、思いっきり手を伸ばす。
ずっとずっと遠くにいるソレはいくら手を伸ばしても掴めるはずがないのに。
満天の星に、もしかしたら一つくらいと有り得もしない事を思ってしまう。


「姫ッ!!!!」


突然背後から大声で呼ばれ、悪戯が見つかった子供のようにビクリと肩が大きく跳ねた。


「何をなされているのです!!」


バサバサと羽音を立てて泡の前に回り込んだその顔はお怒りそのもの。


「あら、黒羽丸。お帰りなさい」

「何そのような呑気な事を!落ちたらどうするのです!!」

「ふふ、大丈夫よ。昔はよくやってたもの」


目尻を釣り上げ、声を荒らげる黒羽丸に泡は笑顔で返す。
ヒラリヒラリと躱され、一方的に怒る此方は他から見れば滑稽な事この上ない。
まさに暖簾に腕押し状態。
ハァと溜息をつき、冷静さを取り戻した後に黒羽丸は泡を見据えた。


「一体何をなされていたのですか?」

「星をね、見ていたの」


頭上に広がる星屑が金色の瞳に映される。


「手を伸ばしたら掴めるような気がして」


スッと空に向かって伸びた細く、白い腕。
小さく笑って「そんな事ないのにね」と言った彼女の横顔は少し残念そうだった。


「…掴む事は出来ませんが、近づく事は出来ますよ」

「え?」

「失礼します」


そう言うと首を傾げる泡を余所に黒羽丸は軽々と彼女を横抱きにした。


「黒羽丸?」

「しっかり掴まっていてください」


タンッと屋根を蹴り、空へ飛び立つ。
遠ざかる地面に反比例し目前に広がる闇と小さな光。


「綺麗…」

「いかがですか?」

「ふふ、ありがとう。とっても素敵よ」


満悦の泡に黒羽丸が優しく微笑む。
その顔にドキリと心臓が跳ねると同時に愛しさがわいて、そっと寄り添うように体を預けた。


「泡様?」

「黒羽丸は温かいのね」


呟くようにそう言えば、抱く腕に少しだけ力が込められる。


「姫も温かいですよ」


縮まった彼との距離に泡は幸せそうに腕の中で笑った。
釣られて黒羽丸の頬も自然と緩み、愛おしげにその瑠璃色の瞳が細められる。


「星を見たい時はいつでも仰せ付けください。私がお連れします」

「ふふ、ありがとう」

「泡様のお望みですから。全て私が叶えて差し上げたいのです」


その言葉に驚いて目を見張るも、すぐにまたいつもの柔らかな笑顔に戻る。


「なら、もう少し空の散歩に付き合ってくれるかしら?」

「喜んで」


静かな夜に彼の羽が舞う。
そんな二人にお空のお星様だけがキラキラと笑った。

 ねェ気付いてた?
 お互いの頬が
 ほんのり朱く色付いてる事



煌めく星屑パラダイス
(寒くありませんか?)
(大丈夫よ。黒羽丸とくっついてるから)
(そうですか[し、心臓が…])





end

ドキドキが半端ないのです。
シャイだから。笑
短い上にオチが意味不という…汗;;


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