水色マシェリ

□。
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「先に湯もらったぜー!」


夕食前に修業での汗を流すのに先に風呂に入った淡島、雨造、土彦、イタクの四人が着流し姿で膳が並ぶ広間にドカリと座った。


「あーさっぱりしたァ。美月ーお茶くれ」

「はい、只今」


失った水分補給に冷たい茶をと淡島が頼めば、お盆にコップを四つ載せた気の利く彼女が各々に手渡していく。


「ありがとな」

「美月ィいい奥さんになるぜェ」

「冷たくてうめー!」

「あはは、大袈裟ですよ」


照れ臭そうに笑いながら最後の一つをイタクに渡す時、美月の動きが不自然に止まった。


「はい、どう…………………」

「…ンだよ」


ジッと瞬きもせずに自分を映す綺麗な水色にイタクは怪訝な顔をする。
問いかけても何も返ってこない事に居心地が悪くなり、「オイ」と呼びかけるとハッとしたように目を見開いた。


「…イタク、さん……?」

「は?」

「イタクさんですよね…?」

「何言ってんだ今更」


確かめるように聞く美月を訝しげに見れば何故か安心したように微笑んだ。


「よかったです。一瞬誰か分かりませんでした」

「随分長ぇ一瞬だな」

「バンダナを取ったイタクさん初めて見ました。印象変わられますね。とても格好良いです」

「そうか……は!?」


早く喉を潤そうと適当な返事をしたイタクの耳にさらりと入った言葉。
動揺するこちらとは裏腹に発言者は相変わらずヘラリと笑っている。


「何だァ美月。イタクに見惚れたか?」


そんな面白い展開を淡島が聞き逃すはずもなく、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら美月とイタクの会話に口を挟む。
茶化されていると分かっているのかいないのか当の本人が恥ずかしがる様子は一切ない。
それどころか…─。


「はい。でも私、いつもイタクさんに見惚れていますから」

「なっ…!!??」
「「は?」」
「お?」


言われた本人は落とされた爆弾にカァァァと柄にもなく顔を耳まで赤くさせ、呆気にとられる雨造と土彦の横では淡島が愉しそうに笑った。


「あ、お腹空かれてますよね。今御膳持ってきますので待ってて下さい」


言った言葉がどれ程威力的だったのかなど理解していない美月はパタパタと小走りで台所へと消えていく。


「だーとよ。どうすんだイタクー」

「……うるせー」


赤くなった顔を隠すように側方を向いても黒髪から覗く耳で照れている事はバレバレだ。
これから面白くなるな、と淡島は気付かれぬよう小さく笑った。


純粋あくま

(計画的な小悪魔よりも)
(真っ白な悪魔の方が何十倍も厄介だ)



─心臓が持たねーよバァカ




end

バンダナ取ったイタっくんは格好良いよねvV
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