水色マシェリ
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いつも以上に賑やかな屋敷。
今宵、妖怪達は新人歓迎会という名の宴会を楽しんでいた。
「飲め飲め人間!!」
「ありがとうございます」
すっかり出来上がった彼らの標的は今夜の主役である美月。
たかが人間の小娘がどこまで飲めるか見てやろうと小馬鹿にされているのも知らず、美月はニコニコと杯を受ける。
「美月ィの奴、大丈夫か?」
「アイツらも大人気ねー事しやがって」
心配する雨造、土彦の視線の先には宴会が余程嬉しいのか終始笑顔の美月がいる。
少し離れた所で静かに酒を飲むお馴染みの彼ら(冷麗と紫は給仕)は仲間を取られたようで面白くない。
「イタクー、助けに行こうぜ」
「楽しそうにしてんだ。放っておけ」
「冷てェ奴」
大丈夫か、大丈夫かと頻りに様子を伺う雨造にイタクは溜息をついた。
「そう言うイタクも心境は穏やかじゃねーんだろ」
「バカかお前」
「照れんなって。美月可愛いもんなー」
ケラケラと笑う淡島はほろ酔い気分なのかやたらと隣に座るイタクに絡む。
げんなりと酔っ払いを見遣るイタクに土彦が何となしにポツリと呟いた。
「美月は酔っ払ったらどうなるんだ?」
「「「…………」」」
人間での成人年齢は二十歳。
美月の年齢はまだ十八と聞いている。
よって酒に慣れているとは思えない。
酔った時の定番と言えば……、
甘えっ子
笑い上戸
泣き上戸
→お色気十倍
「「「美月ー!!一緒に飲もうぜ!」」」
「待てお前ら」
脳内選択が見事に一致した三人にイタクが制止をかけると振り返った顔が不服に歪んだ。
「んだよ、止めんなよむっつり」
「淡島…まずおめーから切り刻んでやる」
背中の収納具から鎌を取り出そうとするイタクを雨造が「落ち着けー!」と宥めると、チッと舌打ちし渋々ながらも手を引く。
「そんなに心配ならイタクも美月の隣で飲めばいいじゃねーか」
「別に心配なんてしてねーよ」
「とにかく行こうぜ。オイラ美月と酒飲みてー」
「オーイ、美月!俺らも一緒にいいかァ?」
淡島が美月にそう問えば「勿論です!」と至極嬉しそうに頷く。
はしゃぐ三人の後を追いながら、監視ついでだと言い聞かせ彼女の近くに腰かけると、眩しいばかりの笑顔を向けられた。
不覚にもドキリとしたのを悟られぬよう酒を流し込み、水色を肴に一杯やるのも悪かねーと少しばかり思うのだった。
─────
二時間後…─。
「あのォ…………大丈夫ですか?」
辺りに散らばる酒瓶と泥酔した妖怪達が転がるその場には、唯一人美月だけが生き残っていた。
「(な、情けねー……)」
「(オイラ吐きそうだ……)」
「(強すぎだろ……)」
「[死]」
これぞギャップ萌え
(小さい頃から飲まされれば)
(そりゃあ強くもなりますよ)
「…何があったの?」
「あ、冷麗さんと紫さん。給仕ありがとうございます」
「コホコホ…美月、一緒に寝よ?」
「はいっ!喜んで」
─お約束設定?何それ、おいしいの?
end
美月ちゃんは大の酒豪というプチ設定。
最後はイタっくん、雨造、淡島、土彦の台詞。
イタっくんはむっつりだと思います(*`艸`)