神喰

□灰といばらのない道
1ページ/1ページ




同期のナナちゃん、先輩のロミオくん。それぞれ年下ではあるが、あまり年の差を気にしないでの付き合いができそうでほっとする。だけど弟と同じ年の頃合いというのもあって少し、姉心のようなものが出てきてしまう。
ジュリウスも初対面の時には少し取っつきにくい印象だったが、話をすればなんという事は無い。言葉はかたいが気さくないい人だった。神機のあれこれ、特に銃形態については嫌な顔ひとつせずに丁寧に説明してくれたのは本当にありがたい。

武器の形態についてはそれぞれ既に決めているらしい。ナナならブーストハンマーでショットガン、ロミオならバスターブレードとブラスト。ジュリウスはロングブレードとアサルト。

さて、私はどうしよう?

最初の武器は支給され、その後は自分にあったものを決めていく方針のようなので一通り訓練場にて使用してみる。けれど、武器というものを持つこと自体が初めてなせいかどれも馴染みそうな気もしつつ違和感を感じる。
ダミアンさんの助言も聞きつつ、悩んだ結果、ショートとロングの2つに絞り、銃形態はスナイパーとブラストの2つを選んだ。何故それぞれ2つも、と言うとそれらを習得しておけば後に楽になるのではなかろうか、という予想からだ。

現時点でブラッドの皆の武器形態は大ぶりの得物が多く、一発一発は強力だが動作に隙が生まれやすい。そこをカバーするならショートがいいだろう、というのが私の考えだ。
ラケル博士いわくこれから隊員が増える事もあると聞いたので、じゃあ私も大ぶりな武器が欲しいなっていう気持ちからロングを選んだ。使い方に困ったらコツなどをジュリウスからご教授願おう。

「ロングを選んだのか」
「ええ、ショートも使いやすかったけどこれはこれで動きやすかったし」
「お前は覚えるが早いな。特性の違う得物を使いこなす器用さには感心する」
「褒めてもなにも出ないよ」
「そういうつもりは無い」
「無いの?」
「無い」
「なんだ、じゃあチョコはいらなかったか」
「?」

首を傾げるジュリウスに苦笑しポケットから出したチョコを差し出す。

「これは?」
「局員さんから貰ったから、おすそ分け」
「…」
「褒めてくれてありがと」
「貰うために褒めたわけでは…」
「解ってるよ」

真面目だなぁ。
訓練に付き合って欲しいと頼めばふたつ返事で了承してくれるお礼には物足りないくらいだが、あまり畏まっては距離が縮めにくい。それに他にあげれそうなものが無い。

「甘いものは嫌い?」
「いや…」
「なら良かった」

珍しげにチョコを眺める姿が普段とはかけ離れていて可愛いと思ってしまう。

「そう言えば、ジュリウス」
「なんだ」
「ユノって、知ってる?」
「…ああ、フェンリルの広報活動に協力してくれている歌姫、だったか」
「そうそう、この前フライアに来てたよ」
「それは…ロミオが騒いだだろう」
「ファンなんだってね。今日はお風呂に入らない―って言っててナナに引かれてた」
「風呂?」
「タイミング悪くて、ふざけてた時にちょっとぶつかったの。あ、怪我はさせてないよ?」
「しかし、それは」
「レア博士にも注意されちゃった」

む、と眉を寄せるジュリウスに既に注意された事を伝える。案の定軽くため息をついて気を付けるようにと釘をさされた。

「私は知らなかったけど有名なんだよね」
「俺も情報でしか知らないが、ロミオが言うには良い歌だそうだな」
「今度借りて聞いてみようかな」

そうしたらジュリウスも一緒に聞く?と尋ねるとそれもいいなと笑みを浮かべた。
思ったよりもよく笑う彼に、少しずつ距離が縮まっている事を実感する。時には厳しいが基本彼は優しい。訓練の初っ端が実施訓練だとしても、…優しい。うん。

アラガミを間近で見たのはあれが初めてだった。覚悟は既にしていたがそれでも恐怖心全てを拭い去れるものではない。
喰われる、という事が自分にも起こり得ると痛感する。そう易々と食われるつもりは毛頭ないがそれでも初めての異形の生物は恐ろしかった。

けれど戦う力が自分にもある、という事を否が応でも知った。

「そうだ、夜」
「ん」
「近々ブラッドの隊員が増える」
「本当に?」
「ああ」
「どんどん増えるねぇ」

増えるとは聞いていたがこうも早く増員とは。

「そうだな、だが感応種に対抗するにはまだまだ少ない」
「…ねぇ、今度の来る人はどんな人?」
「グラスゴー支部で実戦経験のある第一世代だ。即戦力としては申し分ないな」
「おお、経験者かー。頼もしいね」
「助言を求めるには適任だろう。お前には―――…」
「ん?」
「…いや、なんでもない」
「え、なに」
「…お前には何かとフォローを頼むかもしれない」
「私で出来る事なら、どんとこい」
「そうか」
「うん」

では、よろしく頼む。そう言ってほほ笑むジュリウスにお任せくださいと胸を叩いた。

「その代り、また付き合ってね」
「ああ、お安い御用だ」






2014/06/28

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ