Original Short

□思い出の中の呼び名
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「マキくん、わたしのこと覚えてる?」
その手紙が僕の家のポストに入っていた。いや、正確にはメモといった方が正しいかもしれない。なぜなら、小さな紙に本文だけ書かれた、宛名も封筒もなく、名前すら書かれていないものなのだから。
「誰かのイタズラかな」
そう呟きながら玄関のドアの前に立つ。流石に立冬を過ぎた今は暦の上では冬、寒空の下で考え事をすると風邪をひく。
「マキくん、か…」
遠い昔に、たくさんの人たちから呼ばれていたあだ名、今更になって思い返すことなんか無いと、ずっと思っていたものだった。

「へっくしっ!」
結局あの後差出し人が誰かドアの前で考えていたのがマズかったらしい。見事なくしゃみを部屋に響かせていた。
「‥これじゃあ差し出し人見つけたら一言いってやんなきゃな」
自業自得のような気がするが、ベッドの上で寝ながら落ち着いて読んでみるとあることに気付く。『字が妙に幼いこと』。「ホント誰なんだよ…」そういえば、と僕は考えた。どうしてマキくんと呼ばれるようになったんだっけ…?
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