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□子どもの日
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『鯉のぼり』幸趙♀家族
鯉は登竜門を登り、竜になる。
だから鯉のぼりを飾るのだと聞いた。
幸村は長男を抱いたまま、縁側に座り鯉のぼりを見上げていた。
「とと様、大きい。」
まだあまり喋れない長男は鯉のぼりの感想を言う。
「そうだな。」
長男の頭を撫でる。そして再度、鯉のぼりを見上げる。
自分もいつか竜になっていた。
自分がまだ鯉だった頃、自分は龍に恋をした。
その蒼龍に釣り合い、求めている内に、自分は赤竜と呼ばれた。
パタパタと足音が聴こえる。
妻に作り方を教えてもらった菓子を長女と次女が持って来るのだろう。
慌てている足音だ。
「とと様、柏餅です!」
「かか様に教えてもらいました。」
「「食べて下さいっ!」」
「戴くよ、ありがとう。」
綺麗な形の物ではなく、少し歪な形の柏餅を手に取って食した。
「美味しい、ほらそなた達も。」
「「はーい。」」
柏餅を頬張る子ども達を見ると、
自分の愛する妻も幼い頃はこんなあどけない表情をしたのかもしれないと思う。
「あなた、お茶ですよ。」
黒髪を一つに束ねた妻が茶を盆に乗せて此方に来た。
大きいお腹の中には、四人目の子どもがいる。
妻が隣に座ると、私は妻のお腹を撫でた。
「この子もまた………、竜になれますように。」
私も妻もお互いに笑顔になった。
終わり