無双BOOK

□恋の花
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桃の花が咲く蜀の庭園。



桃園の誓いから、蜀の城には桃の花が多く植えられていた。



今は昼間。



呉から来た凌統は咲き誇る桃を感嘆しながら眺めていた。



呉では余り見ない桃の花。




「おにいちゃん、おはなみしてるの?」


凌統が下に視線を向けると、小さな顔三つ此方を見上げている。


「あー、まぁ、そんなとこ。」

曖昧な返事を返すと、


「ぼくたちはこれからちかいをたてるんだよ。」


小さな男の子は笑いながら言った。



「誓いって、桃園のかい?」


子供達に目線を合わせて聞く。

「はい。そうです。」

幼いながらも確りしてそうな女の子が言う。


「せっしゃたちも、ちちうえたちのように、りっぱなぶしょうになるのです!」


はしゃいでいる子供達。



「(父上ってことは、三人の子供か。)」



「阿斗様ー?関平ー?星彩ー?」


凌統は聞き慣れた声に反応した。



「趙雲殿っ!」

「わっ、凌統殿?」



凌統が趙雲に抱き着いた。



「ししょうからはなれてっ!」

女の子・星彩が凌統の足を叩く。


他の二人も視線が鋭い。




「あっ、こら止めなさい。すみません、凌統殿。」


「んーん、いいよ。それより、趙雲殿。一緒に花見でもしない?」


凌統は子供達の攻撃を受けながらも、笑顔で趙雲を口説いた。




「すみません、今は…。」


「あっ、そう。」


「ですけど………。」



『夜になら………。』



耳許で趙雲が小さく呟いた。



凌統が気が付いた時には、趙雲と子供達は居なかった。
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