+小説+

□二人の手〜雪那〜
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 届くはずのない想いなら、
 伝えることなんて出来はしない。
 ただこの胸にしまいこんで、
 永久に離さない。


「雪那ーっ!」
 一人下校していく生徒達の後ろ姿をなんとはなしに眺めながら、校門でいつも通り待つ私に向かって駆け寄ってくる片割れの姿が見えた。
 気付いた私は、つい嬉しさが溢れ出して微笑むと小さく手を振った。
「はあ、はあっ……ごめん待たせたっ!」
 急いで謝ってくる、父親によく似た黒髪が下げられた頭と一緒になびいた。
「いいのよ、春瀬は生徒会の仕事があったんでしょう?」
「ううん、それでもごめん! 帰りにアイス奢るね!」
「ふふ、ありがとう」


 ああ、その真っ直ぐな眼差し。


「……うん、じゃあ帰ろう、って、雪那!?」

 いきなり繋がれた手に驚いて声をあげる春瀬。
 自分でも驚いた。気付いたら手を伸ばしていたから。


「いいじゃない、たまには昔みたいに手をつないでも」


 何でもないことのように取り繕う。
 内心嫌な汗が止まらない。
 でも、春瀬はまだ振りほどかない。
 私も離すことが出来ない。
 私をひきつけて離さない、春瀬の温もり。


「いや、でももう高校生なんだしさ……」


 遂に繰り出された言葉だけの抵抗。


「……だけど、私達は」


 そして私の落とす、
 最低で最悪の最終兵器。


「双子の姉妹なんだから」


 自分自身の心を、爆心地に変える核弾頭。


「……うん、そうだね」


 わかってる。
 わかってるわ。
 二卵性で顔はそんなに似てないし、特技も性格もまるで違うけど。
 繋がれた手だけは、昔から二人そっくりなのよね。
 だから、貴女は間違いなく、私の双子の妹。


「帰ろう」


 それでも、貴女は私の手を、握り締めてくれたから。
 胸を焦がし続ける痛みと一緒に、
 私は自分とよく似た手を握り返した。


 届くはずのない想いなら、
 伝えることなんて出来はしない。
 ただこの胸にしまいこんで、
 永久に離さない。


+終+

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