英雄王と新たな女王

□第1章 2016年・日本
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そのときだった。

「イブの娘よ」
深く、朗々としたあの声が、頭の中をふっとよぎる。

「開きなさい、その本を」
あのライオンの声が。



「あなたがこの本を再び開くことを、私は、ナルニアの民は、待ち望んでいたのだから」

『アスラン…?』


その言葉を口にしたとたん、不思議なことが起こった。

部屋の電気も、窓から差し込む金色の朝日も、すべての光が一瞬ちらっとしたかと思うと、すぐに消えてしまった。
まるで、ロウソクの炎が吹き消されるみたいに。



よくわからないまま、何も見えない暗闇に呆然と突っ立っていた。
この世界で一人ぼっちになったかのような、そんな恐怖に私は凍りついた。



「何も恐れる必要はない」

『え…』

「君も、おいで」


威厳に満ちているが、それでいてとても優しい声だった。

本の表紙を開くと、本は淡い光を放ち始めた。春の陽だまりのような光だ。


『夢…?』


白い光は徐々に強くなり、目も開けていられないほどになり、その光は、私を包み込んでいった。


体がふわりと浮くような不思議な感覚があり、私は息をのんだ。
はっとするほど新鮮な空気を思い切り吸い込むと、身を切るような冷たい風が頬を撫で、髪がなびいた。


きんきんと寒気がするような気がして、ぞっとするほど冷たいものが首筋に触れた。


おそるおそる目を開けると…そこは白銀の別世界だった―――。

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