白銀の雪世界。 こんな場所に、たった一人。胸は不安で不安でいっぱいだった。 どこまでも厳しく、冷ややかな風が容赦なく頬を打ち、吐く息は煙のように白かった。 足には一応スリッパを履いていたが、やはり雪が入ってきて、靴下はぐしょぬれになった。 夢、だったらいいけど。 夢じゃないなら、ここはもしかして… そのときだった。木の陰から誰かの足音が聞こえたのは。 逃げようかと思ったけど、足がすくんで動かなかった。 雪を踏みしめる音、木を掻き分ける音、木からどさっと雪が落ちてくる音がして… 「こんにちは!」 その声に思わずびくっとしてしまう。 出てきたのは…小さな女の子だった。金髪のショートボブで、リボンの髪飾りをつけている。 くりっとした瞳が印象的な、愛らしい女の子だった。 彼女は古風な毛皮のロングコートを着ていたが、とても大きく、重そうで、まるで分厚い毛布にでもくるまっているみたいだ。 それから続けて、二人の男の子と一人の女の子が出てきた。 みんな、金髪の女の子と同じような毛皮のコートにくるまっている。 小さい女の子は言った。 「私、ルーシーよ。あなたは?」 『…かりん』ぽつりと呟く。 「私はスーザン」と大人びた黒髪の女の子。 「ピーターだ」と金髪の少年。 「で、こいつはエドマンド。僕の弟だ」 …頭の中が真っ白になった。 『ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシー』 ぐらりと視界が大きく揺れ、めまいがした。 「大丈夫?」スーザンが覗き込んだ。 「ナルニア、ペベンシー兄弟」私は呟いた。 「…どうして、名字がわかるの?」とルーシー。 胸がどきんと高鳴り、嬉しさと恐ろしさの交じったおののきが、全身を駆け巡っていった。 ここは、やっぱり… 『私、ナルニアへ来たんだ…!本の中に入っちゃったってこと…!?』 |