英雄王と新たな女王

□プロローグ
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ナルニア。

それは私にとって、特別な言葉。


架空の国だとは分かっていても、もしかしたら。
もしかしたら、本当にあるのかもしれない。



「何やってるのかなー?」


ビクッ。


『お兄ちゃん…』


振り返ると、中学生の兄がニヤニヤしながら私を見ていた。


「またタンス入ってんの?あのナルニアとか
いう本のこと、信じてるのかよ。どう?森はあった?フォーンはいたか?マジで信じてるんだしなー、お前」


『…もういいから。ほっといてよ』

むっとして言うと、兄はさらに調子に乗った。


「あーそうかそうか、ごめんなー。お前がお子ちゃまだってこと、忘れてたよ。まだ小4だしな。子供の夢壊すとか、一番やっちゃいけないからな」

『……』


そして兄は私の机から一冊の本を取り、タイトルを読み上げた。


「ナルニア国物語、ライオンと魔女」


『返してよ!』


私は涙目になって取り上げ、本棚の奥にしまいこんだ。


『別にナルニアなんか信じてないし…っ!』



それ以来、私はナルニアを読み返すのも、そのことを考えるのも、やめてしまった。


だから今も、その本は本棚でずっと眠り続けているのだ―――。

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