読の間〜小説

□エピローグ:この名は誇り
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今まで自我が生まれたロボットを何体か見てきやしたが、ロクな運命を辿らない奴らばっかだったっスよ。
制御できなくなり暴走しちまうンでさ。
で、最後は…言わなくても、解るっスよね?

この俺は運が良かっただけ…。
今居るこの環境は良いのか悪いのか、良くわかんねぇけど。
でも、結果だけ見れば良かったのかもしれやせん。
バグと言う自我のおかげで今の俺が存在できてるンスから。
それには感謝してるっスよ。
でも…やっぱり……。いや、なんでもねえっス。

…自分を見捨てたロイド様を恨んでねえか…って?
そんなの即答でNOっスよ。
そりゃあ、見限られたのは悲しいっスよ。
でもそれ以上に、今までのロイド様との記録が俺に微笑むンス…。
優しい声で、悲しい顔で、なにより…泣きそうに…。
「すまない…お前を置き去りにして」って…。
何度も何度も、この映像が頭部に流れるンでさ。
これは俺の中にあるバグが作り出した虚像かもしれやせん。
でも、俺はこう思う…。
ロイド様は故意に「バグ」を植え付けたんじゃねえかって…。
あれはバグなんかじゃなく、何らかのシステムだったのかもしれやせん。
ロイド様、言ってやした。
「いつかお前に心を与えてやりたい」って…。
多分、兵器の俺が哀れに見えたじゃないっスかね。
今の俺なら理解できるかもしれやせん。
あの時の俺はただ、人を殺す事しか考えてなかったっスから。それが存在意義だって…。
だからロイド様は、その「意義」を変えたかったんじゃないっスか。
「生きる喜び」とか、「死を悲しむ意味」とか…。
それを教えたかったのかも…。
きっと俺を手放すのだって最後まで迷ったはずっス。
ロイド様は優しい方だったから。
それだけで、それだけで……、もう…充分…スよ…。
俺、今初めて、「カロル」で良かったって思えたっス。

なんて思うのは、流石に自惚れスかね…?

…っと、なんかすいやせん。
長々とつまんねぇ話をして。
俺はそろそろ食料の調達に戻るぜ。
うまい獲物を仕留めてくるんで期待しててくだせぇ。
また聞きたくなったらいつでもくるっス。
んじゃ、行って来やーっス。


...END...


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