華の間


□一陣の風光
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渡り廊下から見える教室の窓
時たま顔を出し
手を振ってくれる君
振り返して はにかんでは
焦がれてた

通い慣れた通学路
いつも迎え入れてくれる校門
元気に挨拶をする先生方
清々しい朝のクラブ活動
活気に溢れた学校内


この日常は…もう…見れないのか


瞬間 一陣の風が吹き(すさ)
桃色の花弁が何片(なんひら)
目の前を横切ると
そこには 静まり返った校舎と
僕だけが(わび)しさの中に
取り残されていた


ここにいるのは
振り返るため 思い出を
忘れないため 風光を
見えていたものは残像で
僕の名残そのものだ


筒に込められた洋紙は
義務的なものでも
この一枚には
数えきれない程の感情で
溢れているのが読み取れる

当たり前の日常は ここにはない
振り返っても
君の笑顔も見当たらない


一歩 踏み出す度に
戻れない風景がよみがえる
一歩 踏み出す度に
振り返る風景がよみがえる
一歩 また一歩
踏み出す度に実感する
本当に お別れなのだと


瞬間 あの一陣の風が
また吹き(すさ)
桃色の花弁が何片(なんひら)か目の前を横切ると
そこには 視界が滲む校舎と
誇れる思い出を抱えて
感無量の僕が取り残されていた

もう少し もう少しだけ
僕が離れてしまえば
今 この時間は 崩れ去ってしまう
一番がんばったのは この校舎
君だというのに
誰も気づいてくれないのかな…

だからね
あと少し… あと少しだけ…
消えてしまうその瞬間まで
君と取り残されたままでいたいんだよ



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