陰の間


□精神乖離(せいしんかいり)
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形ある物質なら
処理することは可能だ
例えば 用紙ならば
ビリビリに()いてしまえばいい
もしくは シュレッダーにかけ
細かく破砕(はさい)
後は綺麗に焼却処分される

だけど 処分しきれないものなら
どうすべきか…

忘れたくとも
忘れられぬ記憶、とか
忘れたくとも
忘れさせてくれぬ想い、とか

切り離しても
戻って来てしまう心と似ている
肉体と心は分散できない
器に中身がなければ
ただの着ぐるみだ

それでもこの肉体に宿る
心と言うものは厄介なもので
解離(かいり)処理を実行しようとしてる
破壊の衝動の方が圧倒的に質量が高い

だけど ちょっと待て、と
心の奥底に宿る良心が呟く
わずかな熱量なのに
衝動を抑え込むだけの
説得力は持ち合わせている

分散させた方が楽なのは確かだ
良心など握り潰せ
こんなものはただの(かせ)にすぎぬ
ちっぽけな留め金だ 外してしまえ

肉体と心など簡単に引き裂ける
形のないものほど脆いものはない
形のないものほど
壊れやすいものはないってこと
有言実行させよう
この身に刻み込め
思い出に苦しめられぬように

衝動に背中を押してもらおう
善悪を(たが)えればいい
それが今の「正義」だ

愛した人…だった…?
アイしてくれてた…のかな?
元は…交わし合った…ココロ
一つに…混じり合えた…のか………???

あぁ…ほら…
もうワカラナイ
君も僕も目が合わないウツロ
渦の中に引きずりこまれてることすら
わからない

ああッ…嗚呼……アア………
ワカラナイ、ワカラナイ
ボクらは精神乖離(赤の他人)だった
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