読の間〜小説

□エピローグ:この名は誇り
1ページ/2ページ

―――とまぁ、こんな感じで過去の俺はヤンチャしてたンス。
その時できた傷が、この顔の傷なんでさ。これは不覚だった……。

それよりも、気になっているのは、あの時起こった不可解な現象スよね。
あれは「ただの居合い抜き」、だった訳ではなく、「シャドーエフェクト」つー裏ワザも使ったンでさ。
ここぞと言う時に使う必殺技みたいなもんスよ。
意味分かんねえと思うんで軽く説明しときやす。

シャドーエフェクトっつーのは、敵に認識されずに攻撃を仕掛ける高度な技なんでさ。
独自に生み出した技法でもある。
あの時は、すでに敵に認識されてるから人物に仕掛ける事は不可能なんス。
だから、人ではなく物にエフェクトを使ったンスよ。
つまり、このマンゴーシュに仕掛けた訳っス。

そうすると、マンゴーシュだけが意識から外される。
だからあの時わざと武装解除し、身軽になり、「俺自身を注目」させたンでさ。
え? 俺が認識されてるから物に使っても意味ねえンじゃ…って? それは偏見スね。
人間の目って、錯覚に陥りやすいンスよ。
それを利用させてもらいやした。
口調のせいでいい加減に見えるかもしれないスけど、こう見えて俺、頭脳派なンスよ。意外だったっスか?
つか、忘れちゃいやせんか? 俺がロボットだって事を…。
あんまナメてもらっちゃあ、困りやすねぇ。

ついでに、この俺の「自我」の説明もしときやす。
そもそもこの自我は、命令機関の故障が原因なンス。
全機能が停止する前に、自ら命令機関のソースを、自立型ソースに切り替えたンス。
けどその犠牲に、人格機能がバグで侵食さちまって…結果、こんな風になっちまいやした。
はは…笑うしかねえや…。

本来なら問答無用で処分されるらしいンスけど、俺の場合は異例らしく残されたンス。
代わりにこの滅んだ地球にも残されるハメになったンスけどね。
いつ暴走するかわからねえ、ってことで。
本当ひでぇ話っスよ。
でも、いつか暴走したら、躊躇(ためら)いなく壊してくだせぇ。
所詮俺は、「兵器」っスから。
希望なんて持たない方がいい。
自我があるように見えても、その奥には必ず「本能」がある。
ロボットに「心」は預けねぇでくだせぇ。
特に、俺には……ね。
だから、その時は…よろしくおねげぇしやす…。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ