華の間


□TIME〜時間は通貨〜
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「俺たちの世界は "時間" が全て。

遺伝子操作で25歳になると
歳を取らなくなり、その代わり
腕に命の時間が刻印される。

時間の代償は命であり、
命は時間の奴隷となり、
時間は通貨ともなる。
上手く行けば永遠の命さえも手に入る。

この世界は、時間に支配されている」


彼らは手首を握り合う事で
自らの時間を分け与えられます。

息が止まりそうな
脆弱(ぜいじゃく)に揺らぐ灯火(ともしび)達に

荒んで見えなくなった心にも

彼は自らを(つい)やして
時間を分け与えました。
激励の鼓舞で 再び、魂はまばゆく光だす。

それでも倒れ逝く人の姿は
跡を絶ちません……。
いくら時間があっても足りないのです。

時間が全てを支配する
彼は、そんな世界の貧困層に
暮らしていました。


裕福層には永遠の時間が――。

欲しいものはなんだって
時間で手に入る。
綺麗なドレス、富のギャンブル
永久の命でさえ夢ではない。


貧困層では毎日、
自らの時間に追われる――。

時間を稼ぐため仕事に(おもむ)
過酷な肉体労働を課せられる。
時間が迫れば容赦なく奪われ、
生と死が隣り合う。
命のタイムリミットを常に
背負って生きている。

それでも彼は時に、
時間を管理する人にも
自らの時間を分け与えました。

「時間が無くなり、
死んでもらっては困る。
まだやるべき事は残されているだろう」

それが時間を分け与えた理由です。


時間が欲しくとも手に入らない
時間は命と同等だけど
時間も命も平等じゃない

死すらも対等とは呼べぬ
時間が増えれば永久の命が手に入る

だけど
限りある命だからこそ
楽しく生きられ、
喜びを感じられる

永久の命なんてものを
手に入れてしまえば
いずれ人は破滅を迎える
やがてあらゆる感情が薄れて逝き
喜びや、分かち合った日々が
全て、水の泡とかす…


彼は時間の概念を(くつがえ)すため
時間の支配者から時間を奪い、
本来の自分達を取り戻そうと立ち上がります。


時間の支配者は言いました。

「時間を支配者すれば
不老不老になれ、
永遠に生き(なが)らえるのだぞ。
不死は人間の憧れだろ。
惜しくはないのか」


「永遠なんて
存在しちゃならない。
俺たちは人間なんだ。
限りある命だからこそ
生きる喜びを感じられる。
それが本来の俺たちの姿であって
それが人間ってもんだろ」


彼らの渇望は血潮(ちしお)となり
時間の概念は徐々に
変革といういう名の爪跡を残して行くのです。
まるで、自分たちのシンボルのように…。

そして、手に入れた時間を
貧しい人々に分け与えたのでした。


時間、それは彼らの寿命
時間、それは彼らの呼吸
時間、それは彼らの灯火
時間、それは彼らの人生


これは今を生きる 私たちでもある
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