陽の間


□人と獣
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醜い彼の姿はこう呼ばれていました。
「ベステア」
これは「ケモノ」です。

人間は「自分」とは
違うモノを「恐れる」、
畏怖(いふ)するんです。


「おれ が一体なにをしたという?
おれ は ただ……
喉の渇きを潤したかっただけなのに……。
それなのに人間は、おれを恐れた……。」

人間達はやがて
その恐怖に負けてしまい、
彼を襲う殺意へと変わってしまいます……。
「異端」の彼は誰にも受け入れられなかった…。

だから彼はその者達を蹂躙(じゅうりん)し、
恐怖を植え付け虐殺(ぎゃくさつ)しました。
二度と自分をバカにされないように…。


でも、目の見えない彼女だけは違いました。
彼を恐れなかったのです。
それどころか、
彼を「人」だと言ったのです。

彼は、疑問をぶつけました。
彼女に……。

「どうしてお前は怖がらない?」


彼女は言いました――。

「私は確かに、
あなたの姿を見ることは出来ない……。
けれども触れることも出来るし、
気配を、声を、そして思いを――
知ることができます。

あなたは悩み、怯え、考えてる。
そして……私のことを、
心配してくれたじゃないですか。

それが、あなたが人である証拠……。」


彼はその言葉で安心して、
同時に、「人」にさせてくれる存在でもありました。

そして、やがて――
ケモノと彼女は二人穏やかに
幸せに暮らしました。


そう、目に映る全てはきっと、
その映るもの全てに
惑わされ、真実を見失ってしまっているのでしょう。

見えないモノに触れることが出来る時が来たら、
そのものの、本当の心との対話。
どうか 忘れないで……。
あなたのその心で、
手で触れて、感じ取って
真実を見抜いてください。
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