陽の間


□追憶は幻の彼方〜ささやかな幸せ〜
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ささやかな平和で よかった
権力や 膨大な財産なんて
必要なかったのに…

ほかならない
ちょっとした 穏やかな " 幸せ " があれば
それだけでよかった


どこで引き返せば戻れた……?


気づくのが遅すぎて
何もかもが手遅れで……
やり直しなど利かない所まで
来てしまっていたんだ…



この手は汚れきっている
汚れだけならまだしも
この手は血まみれで
清水なんてものでは(ぬぐ)いきれない


(あや)めた者なら数知れぬ
残ったものなど何もない


飲み明かして 馬鹿騒ぎして
いつまでも変わらずにと
誓った あの日々
そして 思い出すらも
全てが幻の彼方へと 消え去った


あの日々は一体なんだったのか?
成し遂げたものは 全て
望まぬ結果を生み
成し遂げたかったものは 全て
自ら壊していった……


破壊の心で 聞こえなくとも
醜く 憎まれようとも
もう二度と 触れることも
叫ぶこともできずとも
浅ましい願いでも
血に濡れた " 俺 " だけど
過去の自分を失った " 僕 " だけど
もう これ以上は傷つけない
悲しませないから

こんな俺でも守りたい想いが
まだ わずかに存在する事に驚いた

ならば これだけは
なんとしてでも失ってはいけない
これがなくなると
本当の意味で俺は………


『彼女の思い出だけは
守り抜かなきゃ!』





これが残された 唯一の希望で
最期の償いなのだから
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