しあわせ色

□春島・ノーザリー島3
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「…っっっおまえっ!!」
「「「…っっっうわぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」」」




突然の大きな叫び声に店主は思わず顔を顰めた





「うわぁ、びっくりしたよ
皆、突然大きな声を出すのはやめておくれ」



顔を顰めたいのはこっちの方である
確かに瞬歩というものに興味はあった
興味はあったがあまりにも突然であったし、事前に一言言ってほしかったし、何よりこの抱え方である
大の男にお姫様だっこはないだろう
船長としての威厳が台無しだ
言いたいことがは他にもあるがまずはこの体制をどうにかして欲しい




「おい、今すぐ下ろ…」
「おい!お前何者だ!!!」



ローの主張がクルーの大きな声で掻き消える
その声の主はキャスケットをかぶった男性クルー、シャチである




「いや、いいから下ろ…」
「突然甲板に現れて怪しいやつめ!!
それにキャプテンを抱えてやがる…ハッ!まさかキャプテンの命と引き換えに何か要求するつもりかっ!!」




ローの言いたいことを尚も掻き消しながらシャチは勝手に妄想を膨らませる
シャチの発言のせいでこの店主はクルー達から一気に殺気を向けた目で睨まれる始末




「おい話を…」
「いやいやいや、勘違いしないでおくれよ
ローくんの命を脅かす真似なんて私がする筈ないじゃないか!」




ちょっと待ってくれ!、と負けじと店主もソプラノの声を張り上げて抗議する
その言葉に対して更に騒つくクルー達




「まて、ちょっ…」
「じゃあなんでキャプテンをお姫様だっこして突然甲板に現れるんだ!怪しいに決まってるだろう!!
それにキャプテンに君付けなんて、俺だって呼んだことないのに!!!
お前キャプテンとどうゆう関係だ!!」



何度目かのローの声はまた掻き消され
そーだ!そーだ!羨ましい!とよく分からない同意を求める声がクルー達から聞こえる
うるせぇそんなの知るか。てか、呼ばせてたまるか気持ち悪りぃ。





話がだいぶズレているがクルー達はそれに気づいていない





「おい、そろそろ…」
「そうかそれは悪かったね
私とローくんとの関係を説明するとしたら簡単に言うと主人とペット!もしくは姫とナイトだ!
もちろんローくんが主人で姫、私がペットでナイトだ!!」





胸を張って堂々と言うものだからローは思わず頭を抱える
そんなこと言ってしまっては更に誤解を生むばかりだ





「「「なっ……何を言ってるんだこいつっ…!!!?」」」




ごもっともである。






はぁ。とローは深くため息をついて
ぽつり、と。



「………店主。
とりあえず下ろしてくれ」




その声が店主に届いたのはクルー達が店主を変質者を見るような目で見つめている頃だった





「あぁ、ローくんごめんね
軽いから抱えている感覚がなかったよ
もっと食べた方が良いんじゃないかい?」





マスターにはぜひ健康でいて欲しいな、と
にこり、ローを丁寧に下ろしながら綺麗な笑顔を見せて言う
まるで女に対する口説き文句のようなセリフをさらりと吐き店主にローは顔を顰めた






「…もう突っ込まないぞ
それより店主、俺のクルーに変な誤解をさせるのはやめてくれ」





そう言うとローは固まってこちらを見ているクルー達をくいっと顎で見やった





「何か誤解を生むようなこと言ったかなぁ
間違ったことは言ってないだろう?
だってローくんは私の姫で、主人で、契約主で、マスターだ」





首を傾げながら不思議そうに言うものだから
あぁ、そうかこいつはこうゆう奴だった…、と改めて確認するロー







固まるクルー達
頭を抱えるロー
それを見て首を傾げる店主






収集がつかないこの状況を唯一まとめる事のできる人物ががちゃりと扉を開いて甲板に出てきた





「おい、お前らうるさいぞー。あ、おかえりなさいキャプテン。
……ん?誰ですその女」


「……ペンギン。よく来てくれた」


「…?はぁ。」






何故か分からないが甲板に出ただけでローから礼を言われたペンギンはとりあえず返事をする





そしてローの隣に立っている少しばかり荷物を持った女を見て、ふむ。と少し考える素振りを見せた後





「それで、その隣の女は誰ですか?
もしやあの倉庫片付けろってその女の部屋にするって意味ですか?
キャプテン、そいつ船に乗せるつもりなんですね」





店主を指差しながらローに問う
状況をある程度把握したペンギンはすらすらと言葉を吐いた
さすがは服船長と慕われるだけあって頭の回転が他のクルーに比べてダントツだ。






おかげで大方の説明が省けた、とペンギンに心の中で礼を言いながらローはクルーに向かって声を出す





「…ペンギンの言う通り今日からこいつを船に乗せる、変わった奴だが害はねぇ
お前ら女だからって馬鹿な真似するんじゃねぇぞ」






そう言うキャプテンにクルー達はおぉぅ、、、と何故か微妙な反応を見せる
まぁ先程のやり取りがあればそんな反応になるのも仕方ない




いつもなら女と聞けば馬鹿みたいにテンションを上げる筈なのに?と何も知らないペンギンは首を傾げながら店主に近づいた





「俺はペンギンという、好きに呼んでくれ
お前みたいな非力な女が海賊になりたいなんて言う訳ないし、大方キャプテンに拐われて来たんだろう?
まぁこれも何かの縁だ、これからよろしく頼むよ
名前はなんて言うんだ?」





「おい、おれは拐ってなんかない
………確かに、お前の名前を聞いてなかった」





ローが言った言葉にペンギンはバッとローの方向に顔を向けてはぁ?、と大きく目を見開いた
船に乗せる奴の名前を聞いてなかったのか、、??、と




思わず固まるペンギンに店主はにこりと笑顔を見せて答えた



「じゃあ、遠慮なくペンギンくんと呼ばせて貰うね

訂正させて欲しいんだけどローくんから拐われてなんかないよ
むしろ自分から船に乗せてくれって売り込んだんだ

みんなにはもう言ったのだけれどローくんは私の主人で姫で契約主でマスターなんだ」





その言葉にペンギンは先程のクルー達と同様何を言ってるんだこいつ…?と、溢れんばかりに目を見開く




固まっているペンギンを他所に
またお前は…と頭をかかえるローの方向へクルリと頭を向けると







「私の名前はソラ
これからよろしくねローくん」







にこりと屈託ない笑みを浮かべて
ソラは言った












ーーーーこれがハートの海賊団とソラの出会いである










↓拍手お礼小説あり


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